姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
「――今日、どうしようかな」
完全に独り言だった。
家に帰れば睦美がいるだろう。
睦美はまだ今日のことを『姉妹の問題』と思っているかもしれない。私を支配する次の一手を思いつき、私の帰宅を待ち構えているような気もする。
「今、むーちゃんの家にはあの子だけなの?」
「パパが帰ってなければ、たぶんそうだと思う。ママは今週、私のために夜勤のアルバイトに行ってるんだ」
麗が私の事情を話してくれたおかげで、母は私のやり方に合わせてくれている。
いろいろ聞きたいことがあるだろうに、じっと待ってくれている。
「むーちゃんのお母さんも必死に我慢して過ごしてるんだろうね。俺もずっと、そうだったからわかる……」
「そう、だね」
碧に言葉にされて、胸が少し痛くなる。
「たぶん明日か明後日、睦美と話すことになると思う」
麗から聞いた様子では、母は今すぐにでも睦美を問い詰めたいようだった。
けれど今日、私が睦美と対峙することを知り、なんとか怒りを抑え込んでいるのだろうと思う。
「お父さんとも相談して、あの子を追い出してくれるといいね」
「だといいね」
私は小さく頷く。
そうだったらどんなにいいだろう。
両親がふたりとも私の味方になってくれたら、本当に安心できるんだけど。
「もしよかったら、今日、どこか泊まる?」
「!」
碧の提案に心臓が跳ねた。
「あっ、へんな意味じゃなく――って、そういう意味でもない……けど、むーちゃんをあの子がいる家に帰せないから、なにされるかわかんないし……」
「……」
碧の早口の唇をみつめる。
へんな意味じゃなくて、そういう意味でもない、だって?
「ふたりが気まずければ、もちろん、れいちゃんも誘って……」
私の沈黙を誤解した碧が声を落とす。
「……」
私は私で、別の意味に囚われている。
「アオくんが私にそういう興味ないのは知ってるから、別にふたりでも大丈夫だけど」
「え、知ってるって、それはどういう……」