姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
 
 ……。
 私は視線を宙に浮かして、重くなった口を開いた。

「あの時、その……、アオくんが睦美の胸を見ようとしたときに、言ってた……」
「わっ」
 碧が急に声を上げた。
「あれは胸の傷を確かめるた――めで」
 弁解しようとした声が大きくなって、周りからの視線に碧は口元を押さえた。
 近くの席の客が会話に反応して私たちを見たからだ。
 咳払いをひとつ。

「見るつもりなんてなかったよ」
 碧が声を落とした。
「そうなの?」
 もちろんだよ! と声がまた大きくなって、碧は頭を抱えた。

「とにかく、あれは、違うから」
 強めに否定して続けた。
「『初めてじゃない』という言質を取るのが目的だったんだ」
「……あれ、っていうのは?」
 もっとはっきりした『答え』が欲しくて突っ込んだ。

「あ、だから……、むーちゃんが気になってるのは俺が言った――あれ、だよね?」
 ふたりで、『あれ』を繰り返していて少し面白くなってしまった。
 碧の反応から、あの言葉が睦美の嘘を暴くための『台詞』で『嘘』だと伝わったけれど、ここまできたら引き下がれない。

「うん、それ。ちょっと衝撃だったよ」
 私はわざと難しい顔を作って見せた。  
「アオくんがいつのまにか経験豊富な男の子になってたなんてさ」
「ちょ、豊富ってわけじゃない! 誤解させたのは俺だけど、そこは訂正したい」
 手を緩めない私に碧は焦っている。
 ……うわあ、豊富じゃないけど、それなりには経験してるってことかあ、

「……」
 私の心も、安心したりしゅんとしたり忙しい。……泣いてしまいそうだ。
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