姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
どのくらいの時間、気を失っていたのかは分からない。次に私の意識が動いた時、倒れている睦美が目に入った。
「むつみちゃんっ、いたっ――」
慌てて動いた瞬間、体中がズキズキズキズキと波打ちあまりの激痛に勝手に涙が出てきた。
「いたいっ、いたいようっ」
私は泣きながらも睦美に向かって這った。
「むつみちゃ、ん、どうしたの、むつみ、ちゃん」
睦美を揺り動かそうとしたが両手に力が入らなかった。
「ま、待って、て、だれか、呼んでく、る」
火が付いたような全身の痛みに悲鳴を上げながら私は必死に這った。人がいる方へ、とにかく這った。
「たすけてくだっ、さいっ、あっち――あ、っち」
私は泣きながら助けを求めた。誰かが駆け寄ってきた気配があった。知っている顔だった。
「麦ちゃんっ? どうしたのっ?」
――よかった、助けを呼べた……
その安堵と強烈な痛みとで私は気を失い、目が覚めたら病院のベッドの上にいた。
――はっ、と息を吸った。
「麦! 気がついた?」
すぐ近くに母がいた。
「もうっ、心配したんだからね。“おてんば”はたいがいにしてよ」
私は全身打撲だった。幸い骨折も怪我もしていなかったという。
きょろきょろしていると母が気を利かせて言った。
「パパは夜勤だからあとから来るからね」
「ママ……むつみちゃんは?」
「大丈夫よ、お家にいるから」
「え? むつみちゃんはけがしなかったの」
「木登りして落ちたのは麦でしょう?」
「……そっか。……そうだよね」
強い痛み止め薬のせいか頭が朦朧としていた。睦美が倒れていたのは自分の勘違いだったのかもしれない、それとも夢を見ていたのだろうか、どちらにしても睦美に怪我がなくてよかった――そんな風に安心して、私は数日後に退院した。
「むつみちゃん、ただいま!」
帰宅してすぐに睦美の部屋をノックした。心配していると思ったのだ。