姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~

取り戻したもの


    *
  
 週明け、大学へは流行りのコーデときちんとしたメイクで行った。

 麗に連れて行ってもらったセレクトショップで、センス抜群の店員に選んでもらった装いだから間違いない。
 
「みんな、おはよう!」
 友達に声を掛けると、皆一瞬ぽかんとして、「む、麦ちゃんっ?」と盛大に驚いてくれた。

「わああ、ど、どこで買ったのその洋服、か、かわいい……」
「お化粧、してる? してるよね?」
 私はにかっと笑って、みんなに言う。

「全部教えてもらって揃えたんだよ! みんなもこういうの好きだったら一緒に買いに行こう!」
 もちろん強要はしない。
 だけど我慢してるだけなら私が突破口になる。

 友人たちが互いの顔を見合わせている。
「もちろん、好きだよ。でも似合わないって知ってるからあ」
「うん。すごく羨ましいけど、私なんてどうせ……」
「笑われちゃうよ、私がそういう恰好したら……」
 私の友達はみんな、奥ゆかしい。

「あのね、私も最初はそう思ったの。みんなと同じだよ」
 また皆が顔を見合わせる。
「いつでも言って! 一緒に行こう!」
 嫌われ者だった私を邪険にせず、そばにいてくれた大切な友人たち。
 これからもよろしく――その想いを込めて言った。
 
 皆で講堂へ向かう。
 静かな足音で、小さなお喋りで。

 廊下の先に睦美がいた。
 自然と皆の足が止まったのは私の歩幅が変わったせいだろう。

 
 綺麗に巻いたロングヘアとウエストが絞られたスカート、ブランド物のバッグ、足首の細さを際立たせるストラップのパンプス――いつもとなんら変わらないそのスタイルの睦美に、心がざわつかないといったらウソになる。
 だけど私が逃げる必要はどこにもない。

「いこっ」
 私は友人たちに声を掛ける。  
 
「……(あ)」
 友達のひとりが、教室の中に入ってすぐに口をぱくぱくさせた。
「……」
 私もすぐに気づいた。
 緩いはずのいつもの空気感が、今日の教室にはなかった。
  
 視線の先に、睦美がただ突っ立っているのが見える。
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