姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~

「……みんな、おはよ」
 誰も睦美に返事をしていなかった。
 それどころか、いつもは睦美のために空けてあげる椅子にも荷物が乗ったままだ。

「……ねえ、どうしたの?」
 静かな教室に睦美の震える声だけが聞こえる。

「……」
 誰も睦美に視線を向けなかった。ただ軽蔑のこもった無言の横顔が見えるだけだ。

 ……そっか、金曜日に動画を見た人たちが拡散したんだ
 加えて、私は日記を公開にした。たぶん麗か碧がその場所を教えたのだろう。
 その結論に行き着き、私は細い息を吐いた。


 先生が教室に入ってきた。

 睦美はよろよろと空いている席に何とか座ったようだが、その背中は丸まったままだった。
 ――人から嫌われることがどういうことか、睦美もようやく知ることになる。
 淡々と、ただその現実を想像した。

 罪悪感も同情もなかった。
 私にも、失った月日がある。

 
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