姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
だが気に留めなかった。
引っ越しの荷解きや買い出しで食事もろくにできないほどやることが多かったからだ。週明けに日常に戻るためには、この週末にある程度済ませなければならない。
そして――
心はずっと、“家族”や碧に捕らわれていた。
友人に時間と気持ちを割いている余裕などなかった。
麦になにもかもバレていたこと、
碧を麦に取られたこと、
麦が両親を味方につけたこと、
自分の出生の――秘密。
……いや、そんなこと、私に関係ない。
自分を産んだ人が卑怯者だっただけのこと。
――『母親』が麦への復讐理由のひとつだったことは、いつの間にか睦美の中から消えていた。
+
♪~
ピロン、とスマホの通知が入った。
慌てて床のバッグを掴み、スマホを手に取った。
メッセージはサークルの先輩からだった。
進先輩:むーちゃん、なんでグループ抜けたの?
なんかあった?
「……は?」
睦美には心当たりがなかった。
服の下に嫌な汗をかいていた。
睦美は画面を戻し、スクロールした。
あったはずのトークルームがいくつか消えていた。
残っているグループにもメッセージが溢れている。
○○がグループを退出しました
△△がグループを退出しました
□□がグループを退出しました
:
:
自分の名前しかないグループを閉じ、激しい鼓動に気を取られながらSNSをチェックした。
友人たちが、睦美抜きで集まって遊んでいる写真が飛び込んでくる。
――ピンポーン
チャイムが鳴って、睦美はハッと顔を上げた。