姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
「アオくんがかなしいのはイヤだよ」
「……ぼくもイヤだよ」
「そうだよね」
碧はつらつらと心の闇を開放し、涙を拭った。
「普通のことすらできないぼくじゃ、みんなのジャマにしかならなくて」
「うん」
「ぼくが入るだけでめんどうそうにされるし」
「うん」
「……ぼくもそれ分かったから、だからにげたんだ」
「うん」
「でも、わりきれない。あいつらもぼくと同じになればいいのにって思うんだ」
私は相槌しか打てなかった。だから代わりに碧の手をぎゅっと握ったままでいた。碧が自分を不幸だと思っていることがずし、ずし、と伝わってきて苦しかった。
「むーちゃん、ぼくと一緒にあいつらに『フクシュウ』してくれる?」
「いいよ。一緒にフクシュウしよう!」
具体的な方法など思いつきもしないのに、私は迷いもなく碧の復讐を助けると約束した。碧は晴れたような笑顔を向けた。
「ぼくは絶対、あいつらより幸せになってやるんだ」
「なってやろう!」
「あいつらの期待を裏切ってやる」
「うん、おもいっきり裏切ってやろう!」
碧が落ち着いた頃、麗が戻ってきた。リビングで碧の母親とお喋りをしていたと言うその口元にはクッキーのカスが付いていた。
「いやー、さっきもどってきたんだけどさ、アオくんがむーちゃんに『プロポーズ』してたからジャマしないようにアオくんママのところに行ったんだ」
「?!」
言葉の意味に首を捻った私の目の前で、碧が真っ赤になった。
――そんな幸せな記憶に包まれたことが、まるで罰のように、
私は目の前の光景をただ眺めていた。