姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
「――そういうわけで、会ったことがなかったおじいさんとおばあさんのお墓参りに行くことにしたの。それに、ママが自分の親の話をしないことも気になってるんだ」
母の故郷へ来たはいいが、墓の場所は分からないこと、母たちのことを知ってる人に何か聞けたらいいなと思っていること、ふたりには迷惑をかけてしまって申し訳ない……などを伝えた。
私の説明に耳を傾ける麗と碧は、ずっと穏やかな表情だった。
「むーちゃん、“足”のことは心配しないで。先にアオくんに相談してレンタカー手配済みだからさ」
「予習してきてるからまかせて」
「……ごめん、私、自分のことなのにまかせっきりで」
ホテルの手配も新幹線の切符も私の身なりを整えることも、なにからなにまで麗の手を借りてしまった。そしてここからは碧にも負担を掛けることになる。
「大丈夫! むーちゃんが旅慣れしてないの分かってるから。私もアオくんもあちこち移動して生きてきた分、気が回るだけ」
麗の横で、碧も親指を立てる。
「運転も自信あるしさ」
碧が言うと「私も結構上手だけど」と麗もすかさず対抗し、「道民の運転スキルに敵うわけないだろ、てか、れいちゃんまだ『初心者マーク』付だろ」「なんだってえ」とふたりが騒がしくなる。もちろん私に気を遣わせないためだと分かっている。
「喧嘩しないで」
だから私も、ふたりの思いやりに乗っかった。「タクシーって手もあるから」――この空気感を、心に刻みたかった。
「むーちゃんに満足してもらえるよう精進します」
碧がかしこまって言い、麗が「分かればいいのよ」と茶化す。
記憶のままの懐かしいリズムは、楽しかった。
*
新幹線と電車を乗り継いで、さらに駅からレンタカーで二十分ほどかけて降り立った場所は、川の音が聞き取れるくらいに静かなところだった。