姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~


 母の実家は更地になっていた。
 ……こんな長閑な土地で暮らしてたんだ
 現在の華やかな睦美とは重ならない。だがおっとりしている母が生まれ育った町だと思えば違和感はなかった。
 
「……とりあえず近所のお家を訪ねてみようかな」
 家はそれなりに連なっていた。
「えっと」
 落ち着きなくうろうろしてしまった私の腕を、碧がそっと掴んでくれた。
「ねえ、少し散策する?」
 麗の声がいつもよりゆっくり私に向かってきた。 

 ふたりが私の動揺に気づいて寄り添ってくれているのだと気づき、心を落ち着かせようと肩で呼吸をした。 
「うん、そう、だね。そうしよっか」
 ありがたく、その提案に頷いた。
「じゃ、私あっち見てくるよ」
 麗が、遠くを指した。
 早足の背中を見送りながら、……もしかしたら気を利かせてくれた? と思い当たり、そっと碧を見上げる。
「……」
「……」
 ふたりきりになると途端に感情がもつれてくる。
 嬉しいのに、切なくて、どうしたらいいのか戸惑ってしまう。
 
「むーちゃん、会えて嬉しかった」
 碧が私から手を離した。その手を――、名残惜しいと思ってしまう自分をひた隠し、笑う。
「……うん、私も嬉しいよ」
「俺は外見なんか気にならないけど、むーちゃんが可愛くてちょっと気まずい……」
「!」
 頬が勝手に引き攣る。
 ……なにが、気まずいの? 睦美に似てること?
「あ、言葉のチョイス間違えてる、俺」
「……」
 私の沈黙が、碧にも伝染した。
 碧が眉間を寄せた。「なんとも思ってない子には平気でいろいろ言えるのに、なにやってんだか……」
 その小声に、遅れて意識が付いていく。
「むーちゃんを前にすると、さ」
 ……それって、どういう意味?
 碧は手で口元を覆っている。もうなにも言ってくれそうにない。
 
「あ、えっと、私、」
 会話を途切れさせたくない一心で話しかける。

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