姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
「アオくんとれいちゃんの手紙、無視したわけじゃなくて――」
「うん、れいちゃんから聞いた。むーちゃんの元に届いてなかったんだろ」
私はこく、こく、と頷く。
憶測だけど睦美に騙されていたと知った今、手紙を抜き取ったのは睦美の仕業ではないかと疑っている。
最初は、親が手紙を捨てたんだと思い込んだ。
睦美に比べて可愛げがない私に“罰のようなもの”を与えたのだろう、とか。
……けれど今朝の母を見れば、母がそんなことをするはずがないと気づかされる。
いつも穏やかで、周りの人を優しい気持ちにさせる――私が知っている母は、そういう人だったのに……
睦美によって作られたマイナス思考が、私の視野を狭くしたのだろうと思うと、やり切れない気持ちになった。
「ずっと誤解させてて、ごめんね」
親のことも碧や麗のことも、ここから先は後悔したくなかった。
「なのに会いに来てくれて嬉しかった。私には、そんな勇気なくて……」
切なさが加速する。
その碧の決意と行動が、睦美と出会わせてしまったなんて――皮肉だ。
だけど、碧はあの日、間違いなく私に会いに来た。
その事実だけは私のものだ。
「むーちゃんだって、俺らから連絡が途絶えたと思ってたんだよね、傷ついたろうしムカついたよね」
「うーん」
低すぎる自己肯定感の中では『怒』より『哀』の感情が強かった。
自分は見捨てられて当然だとあきらめて、初恋と友情は胸の奥に静かに眠らせていたから。
碧が私を窺っていた。
目が合うと、碧は早口で言った。
「これからは今までの分一緒にいたい」
「!」
「いいかな?」
……もちろん、友達として、だよね?
「……」
睦美とのことを知らなければ、私の返事を緊張気味に待っている碧の様子に勘違いしただろう。
「――むーちゃん! お家にお邪魔してもいいって人がいた!」
息を切らして駆けてきた麗に、私たちは弾かれたように顔を向けた。
「その人の娘さんがむーちゃんのお母さんと同じ学校だったんだって! だからいろいろ知ってるみたい」
「聞いてきてくれたの? ありがとう……」
「行こう」
私の肩に碧の手が乗った。
「う、うん」
何気なく置いたであろう碧の手の熱に、また胸が騒ぎ出した。