姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
「――!」
え? ……今、なんて?
……私の、聞き間違え、だよね?
息を吞む。
「は、はい」
動揺を抑えてなんとか頷いた。
「こんなこと聞くのもあれだけど……、李加ちゃ――叔母さんには冷たくされてない? ちゃんと育ててもらえた?」
「……大丈夫です」
答える声が震えてしまったが、お辞儀をしてなんとかごまかした。
『李加』は間違いなく私たちの母の名前だ。なのに睦美にとっては『叔母さん』……?
「それはよかったわあ。お医者さんと結婚したものね。暮らしに余裕があれば心も安定するってよく言うから」
岡田さんの声のトーンが変化した。まるで、母を軽蔑しているような……
「……」
岡田さんの言葉を頭の中で繋げる。
もしかして……睦美は私の――、私たちの本当の家族じゃないってこと?
「あの、《《私のお母さん》》は……」
不穏な予感から、思わず聞いていた。
「実李ちゃんのことは、本当に残念なことよね」
「……」
実李? それは誰なの? 残念って?
「……っ」
暑くもないのに洋服の中で汗が滲んでいる。
なんと切り出せば不自然じゃなく聞きたいことが聞けるのだろうか。
「――あの、“睦美ちゃん”のお母さんはどうしたんですか?」
じりじりしていると、麗が自然に会話に入ってくれた。
「睦美ちゃんはおじいさんとおばあさんから何にも聞いてなかったみたいです」
岡田さんが口元に手を添えた。「そうなの、睦美ちゃん」
「はい」
私は頷く。
麗のアシストのおかげで、混乱しつつも心が冷えてきた。
「私は、今のお父さんとお母さんが、本当の親だと思っています」
睦美の様子を思い出したら自然と出てきた言葉だった。
「ま、まあ……」
岡田さんは苦虫を噛み潰したような表情で私の腕を掴んだ。
「でも睦美ちゃんを産んだ実李ちゃんのことは忘れないであげて。実李ちゃんが可哀想……、浮かばれないわ」
「……」
“浮かばれない”という言葉で、睦美の母親がこの世にいないことを知った。
「あの、今のお母さんと、私を産んだお母さんはどういう関係なんですか?」
押し寄せる疑問のまま聞いた。
岡田さんは驚いた後で信じられないことを口にした。
「どういうって、実李ちゃんと李加ちゃんは双子の姉妹よ」
「っ!」
――息が、止まりそうになった。