姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
「!」
現われた麦は、麗が想像していた“今風の女子大生”ではなかった。
……いったい、むーちゃんになにがあったの?
麦が店長とともにバッグルームへ入ったのを見届けて、麗はいったん店を出た。
……ちょっと予想してなかったな
子供の頃と同じノリで再会するつもりだったが、それは難しそうだと感じた。
バイトの時間が終わる頃、改めて店へ戻った。
ここまできたら麦の“出方”に合わせよう――そう決めて声を掛けた。
麦がまさかの、何も知らずに“うち”を選んだという事実には拍子抜けしたが、自分との再会を全身で喜ぶ姿を見ていたら、いつのまにかわだかまりが解れていた。
「私ねっ、うどんが大好きなの! れいちゃんのこと思い出すって理由もあるけど子供の頃から一番好きなの。求人情報でみつけて、ここしかない! って」
興奮する麦の口調は子供の頃と同じだった。
「採用してもらえたのも奇跡だったのに、その店がれいちゃんのお家って、こんな幸運ある?! 一生分の運、使っちゃったかも」
「……はは、は。まあ、うちも助かるしね」
このご時世、働き手は常に足らない。求人に応募があればよほど態度が悪い人でない限り店長の裁量で即決採用なのだが、せっかく誤解してくれているから事情は濁した。
「――私のこと、覚えててくれただけでも、嬉しい」
麦が視線を床に落としたときに、なにかおかしい、と思い始めていたのかもしれない。
「――アオくんのこと覚えてる?」
そろそろはっきりさせようと、頃合いを見て聞いてみた。