姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~

「須賀君、ですか?」
 かっこいいかどうかの基準は分からないが背が高く痩せ型で、誠実そうな雰囲気の人だった。

「……えっと」
 突然見知らぬ人間に声を掛けられれば、動揺するのは当たり前だ。
 だから私は本題から入った。
「睦美から、“ここに行け”って言われて来ました」
「……どういうこと? きみ、誰?」
「場所を移しませんか?」
 既成事実をでっち上げたい睦美は、今大勢の中にいるはずだ。そして、男が怒りまかせに電話を掛けてくるのを待っている。この場所は同じ大学の人たちがたくさん通る。目撃者を作るのは簡単なことだ。

「……えっと、もしかして、きみ」
 目立たない場所へと誘導すると、須賀の視線が遠慮気味に絡まった。


「睦美の妹です」
 私はまっすぐに須賀を見て、はっきりと口にした。
 ここへ来る前に服を着替えた。化粧もした。もちろん靴もバッグも新品だ。
「なんか、印象、違う、けど」
 須賀は居心地が悪そうだ。
 私の評判も知っていて、睦美に似た顔を前にどうしたらいいのか分からない、そんな様子だ。
 私はためらわず、口を開く。
「言いにくいけど、伝えなきゃいけないことがあって」

「……なんとなく、察したけど」
 そうは言っても、須賀は信じたくなさそうだった。
 私は腹に力を込め、伝えた。

「『妹が言い寄ったから、須賀君を譲る』というのが睦美の筋書きです」
「は、はあ……?」

「念のために言います。私たちは初対面で、これまで連絡したこともありません」
「そう、だね」
 認識を共有する。

「そして睦美は、“このやり方”をずっと続けています」
 自分は“つきあうつもりでいた”。でも横恋慕した妹のために身を引くしかない。自分だけ幸せにはなれない――というストーリー。
「……」
 須賀は乾いた唇を何度も触っていた。 
 
「俺はどう受け止めるべきなのかな」
「……須賀君が大騒ぎして、睦美にどういうことかと問い詰めれば、睦美にとっては“成功”です。でも、もし須賀君が本当のことを知りたいなら」
 私は唾を飲み込んだ。
「……知りたいなら?」
 須賀が思いつめた表情で聞いてきた。
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