姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
「知りたいなら――何もしないでください。須賀君を“切る”と決めていれば睦美は行動を起こさないでしょう」
「……」
初めてのケースとなる今回は、私にとっても賭けだった。
過去、私に“言い寄られた”と思い込んだ睦美の男たちが、騒がなかったことはないからだ。
ただこの賭けに負けることはないとも思った。
妹を差し向けたのに何も訊いてこない男へ自分から連絡する――それでは、須賀の反応を待っていたと認めるようなものだ。
プライドの高い睦美はそれをしないだろう。
「俺、きみのウワサ少し知ってて……」
須賀が、窺うように見てきた。
私が説明したことと、それらを繋ぎ合わせた顔だった。
私はただ、こくん、と頷いた。
これまでの男たちは、私に説明の機会すら与えてくれなかった。
その場で睦美に電話を掛け、『誰がおまえみたいな女とつきあうんだよ』と私を罵る。
私も、睦美に仕組まれたと分かった時点で誤解を解くことをあきらめていた。
「こうして会うのは初めてだけど、遠くからきみのこと見たことあるし、その……普段のきみは」
「私、変わろうと思って」
この決意は私の過去と繋がっている。
だけど、今日会ったばかりの人間に説明することではない。
「もう睦美の言いなりになるのはやめるので」
短く言うにとどめた。
「……」
須賀は押し黙った。
「須賀君に、良い出会いがあること、祈ってます」
「……」
須賀は何も言わなかった。
言えなかったのかも、しれない。
私は深くお辞儀をして、その場から離れた。