姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
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夕食の後、私は物音を立てないよう階段を下り、睦美が入った浴室の気配を探った。
シャワーの音がしたのを確認してから、素早く母のところへ行った。
「“ママ”、明日時間ある?」
意識的に“ママ”と呼びかけた。
私の変化に気づいてほしい――その願いもあった。
ダイニングテーブルで書き物をしていた母はペンを置いた。
「あるわよ、でも麦はバイトじゃないの?」
私は小さく横に首を振った。
「大丈夫」
――明日、睦美に予定があるらしい。
今朝、朝食のテーブルで母と睦美の会話を耳が拾い、いよいよ母に真実を告げるチャンスがきたと、心臓が早くなった。
「……えっと、外で食事しない? ふたりだけで」
いつシャワーの音がやむかと、ビクビクしながら伝える。
「ちょっと遠くに、行こう?」
「もしかして睦美に内緒なの?」
私の様子に気づいたのか、母が尋ねてきた。
「前にもそんなこと言ってたわね。ケンカでもしたの?」
「……」
私はぐっと唇を噛む。
……そんなレベルの話じゃないんだよ、
けれど今は語れない。
「そうだよ。内緒。絶対守って」
「わかったわ」
母の返事にほっとして、私はまた足音を立てないよう階段を上がって部屋へと戻った。
母に真相を話すと決めてから、私はいくつかの事実を整理した。
母は、睦美が自分の子供ではないと知っていること。
そして睦美を迎えに行ったのは両親だから、睦美が誰の子供かふたりは知っているはずだということ。
だけど、睦美が自分の出生について知っているかどうかは分からないこと。
母にこれまでのすべてを伝えるには、私も事実を知る必要がある。
睦美が嘘をついてでも私を虐げたかった理由はなんなのか。知ったところで何も変わらないけれど、知る権利はあるし、母の答え次第では、母が私ではなく『睦美の味方』かどうかも分かる――もしもすべてを打ち明けても母が睦美を庇うなら……私はもう、この家で暮らせないから。
今は正直、期待と不安が半分ずつ私の中で出入りを繰り返している。
だけど、母が“私だけの母”なら信じていいんじゃないかと思うし、願っている。
――そう思っていたのに、
母と車に乗って数分後、私は感情を爆発させていた。