姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~

 
 姉の支配欲と攻撃性を知ったのは高校生の時だった。
 子供の頃からおっとり気味の自分に対し、実李は器用な優等生タイプだった。

「実李はすごいねえ、なんでもできるんだもん」
 習字、水泳、ピアノ、手芸。
 あれがやりたい、これがやりたい――そうやって始めるのは自分なのに、付き添いで付いてきた実李が追い抜いていく。
 と同時に、習い始めてしばらくすると李加はどの先生からも理由が分からない“無視”をされるようになった。
 哀しかったが、その頃から友達に『李加ちゃんって性格悪いよね』と面と向かって言われるようになり、どこが悪いのか分からないなりにも、とにかく気をつけよう……と思うようになった。

 けれど中学――、さらには電車で三駅の隣町の高校に行っても状況は変わらなかった。進級のたびに仲良しだった子たちから嫌われてしまう。


「ねえ、私なにかした?」
 直接聞いてみたこともあった。
「あんなに仲良かったのに、なんで急に無視するの?」
「はあ? 陰でうちらのことバカにしてたのそっちでしょ」
 それぞれ不機嫌な態度をぶつけてきた。
「私が?」
「とぼけたって無駄だから」
 皆、聞く耳を持たなかった。
 落ち込んでいると実李が相談に乗ってくれた。

「誤解を解きたい気持ちも分かるけど、離れていく人より、今そばにいる人を大切にするほうがいいよ」
「……」
 言われてみれば、そうかもしれないとも思った。
「そんな風に考えられる実李はすごいね。私はひとりで傷ついてるだけなのに」
 実李に何かを相談するといつも大人びた答えが返ってきた。そのたびに李加は自分の幼さを恥じることになった。


 高校生のある日のこと、友達以上恋人未満の時弥(ときや)から呼び出された。

「修学旅行のフリー時間、一緒にいよう」
 修学旅行でつきあうカップルも多いことから、それは誰もが憧れるシチュエーションだった。
「い、いいけど……」
 李加は真っ赤になりながら了承した。もしかしたらこの日、自分たちもカップルになるかもしれない――そう思うと恋心はさらに加速し、世界は輝いて見えた。

 けれどそれは実現しなかった。

 
 
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