姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
修学旅行が近づくにつれ、それまでアイコンタクトで照れ合っていた時弥と目が合わなくなった。それどころか、実李とふたりで会っているところを見てしまった。
――修学旅行が何事もなく平凡に終わった後、実李に聞いた。
「この修学旅行で、誰かに告白された?」
我慢しようと思っていたが、やっぱり気になって仕方がなかった。
実李は、何人かには、と笑った後で真顔を向けてきた。
「されたとしても、こんな田舎で相手決めないよ。だって私たちは東京に行って、アナウンサーになるんでしょう」
「……」
それは遠い昔、実李から『一緒にならない?』と誘われて『それもいいかもね』と軽く頷いた、他愛ないやりとりのひとつだったはずだ。
「私たちは顔も綺麗な方だし成績だって良いし、双子という話題性もある。受からない理由がないじゃない?」
……そう、かなあ?
……そんなことよりもさ、
李加は、時弥のことが聞きたかった。
どうして何度もふたりきりで会っていたのかと。
気になり始めたら、はっきりさせずにはいられなくなった。
李加は学校で時弥を呼び出した。
時弥はあからさまに仏頂面だった。
「……あの、さ、なんで修学旅行の約束、やぶったのか、理由教えて」
勇気を振り絞って聞いた。
時弥は苛立ちを向けてきた。
「ふったの、そっちじゃん。俺のこと迷惑だって、“タイプ”じゃないって」
「……誰が言ったの、そんなこと」
「おまえが姉ちゃんに言ったんだろ、俺に勘違いされて困ってるって」
……!
その言葉を聞いた瞬間、過去の自分が抱えたトラブル――小さなこと、大きなこと、傷ついたこと、納得できなかったこと――、それらがパズルのピースがはまるみたいに完成されていった。
……実李だったの?
今まで、私からいろんなものを奪っていったのは……
まさか、そんなはずはない、だって自分たちは双子の姉妹なんだから。
李加は混乱した。
信じられない――いや、信じたくない。
その日どうやって時弥と別れたか、続いただろう会話もなにも思い出せなかった。
ただ、“人に嫌われてしまう”自分を責めた月日の苦しみが、やるせなさが、頭の中をぐるぐると回っていた。
*
「うちらの大学はこの辺かな、ねえ、李加」
「……」
実李はそろそろ志望校を絞ろう、と言ってきた。一緒の高校を選んだ時同様、大学もそうなることが当然だと思っている口調だった。
「入れるとこならどこでもいいけど」
李加は慎重に答えた。
時弥と話した後、李加は中学校時代の友達に会いに行った。