姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
そういえば、睦美を引き取る間際、父に言われた。
『この子は、実李よりもおまえに似ているようだ……だから気が合うだろう』
……どうして私に似ているのよ?
あの時は睦美を家族として迎えなければならない運命を前に、その言葉に立ち止まる余裕はなかった。ただ、あの場にそぐわない言葉だと、頭の奥で引っかかり記憶の底へ沈ませた。
……そういう、意味だったのね
李加は慄いた。
……両親は、幼い睦美の中に“実李が聞かせ続けたであろう私”を見たのだ。
『本当の実李の性質』を。
「ママ! そろそろ麦ちゃんのアルバイト先にお食事しに行こう。ふたりで行ってびっくりさせようよ! あっ、パパも誘って三人で行こう!」
「……」
家族の予定はいつも睦美が決めてくれた――そう、“決めてくれる”と感謝すらしていた。『家族ごっこ』をする必要があったから……
「……そ、そうね」
李加は取り繕うのに必死だった。
わずかでも気を抜けば、睦美に『敵』のような目を向けてしまうだろう。
「パパとママと睦美で仲良くしてれば、いつか麦ちゃんも“混ざりたいな”って思ってくれるからね!」
「……」
睦美の言葉が、表情が――存在が、なにもかもに嘘と裏が見えた。
どうして『これ』を、今の今まで見ないふりできたのだろう……
李加は、あまりの衝撃に後退りした。
……ああ、麦、
……私の大切な娘、麦、
……私と光輝の、輝くような存在の麦、
麦を孤立させていることにも気づかなかったなんて……
――これが、夫婦で逃げ続けた結果?
李加は上着の胸元をぎゅうっと握った。
呼吸が乱れる。
今すぐに、娘に会いたかった。
ごめんね……苦しかったね……寂しかったね……、そう言ってただ、おもいっきり抱きしめて、抱きしめて――――許しを乞いたかった。
【李加視点おわり】