姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
初恋をあきらめない
*
――やってしまった
抑えてきた反動だろうか……
今まで耐えてきた分、怒りが制御できなかった。
「……」
雑踏で足を止め、恐る恐る振り返る。
まだ母の車は動いていなかった。
……どうする? 戻る?
冷静に、ちゃんと話した方がいいよね
「……」
だけど私の足は、動かない。
しばらく迷って――迷って――、戻らないことにした。
また母と話したとしても同じやりとりになるだけのような気がした。
これからどうしよう。
……バイトは、休むって言っちゃったし。アオくんは――“友達”だもの、連絡すれば気軽に応じてくれるんじゃない?
……でも
二人きりで会えば睦美のことを聞きたくなってしまう。
……それに、睦美との“恋愛相談”なんかされたらどうするの?
……ちゃんと笑顔でいられる?
これまでは二度と会えないから『大切な思い出』として割り切れた。だけど再会後は碧への想いがどんどん強くなっている。
碧は大人になり、触れられるほど近い場所にいて、動いて、話して、笑って――もう、思い出じゃない。
「苦しいよ……」
雑踏に紛れて誰にも聞こえないから、本音を吐いた。
「アオくん、助けて……」
母のことを相談したかった。睦美のこともぶちまけたかった。
!
ポケットの中でスマホが振動した。
「…………もしも、し」
声を聞く前に、もう泣いてしまっていた。