姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~

 どうしたの、と言いそうになって睦美の鋭い眼差しを受ける。

「……」
 私はぷい、っと顔を背け、口を閉じたまま階段を上がった。
 だが母の悲痛な表情が気に掛かった。

 数時間前にあんな別れ方をした罪悪感のせいかと思ったが、なんとなく、それだけじゃないような気がした。

 ……もしかして、睦美の嘘に気がついた?
 一瞬浮かんだ考えも、車の中での母との会話を思い出し、そんなはずないか、と打ち消した。

 ……ママは睦美の存在に救われてるんだもんね、私がこんなだから


 部屋に戻り、仕込んでいるカメラの位置を確認し、録画ボタンを押した。

 少し前から睦美の暴言は集まっている。だが足りない。まだ睦美の残忍さが撮れていなかった。
 
 睦美の日課は、私の自尊心を傷つけることだ。
 思い通りにいかなかった日は特に私で憂さを晴らすことが多い。長年の観察から、今日がその日だという確信があった。


 ――――タンタンタン、
 と、階段を上がってくる足音に、私は急いで椅子に座る。

 勢いよくドアが開き、すぐに閉まる。
「ねえ」
 密室状態を作ると、乱暴な大声が向かってきた。
「ママに成人式の着物買ってもらったって?」
「!」
 ……えっ、その話、睦美にしたの? ……じゃあ、ママのさっきの表情は――
 母がようやく睦美の異常性を知ったのかもしれないと思うと、希望のように、勇気が湧いてきた。

「ママに『恥ずかしい』って言われてるのによく一緒に外に出れたね」
「……」
「私がいないときにママとふたりきりになるなって言ったよねえ?」
 睦美の声はどんどん荒くなる。
 私は意志を持って睦美の目の前にすとん、とひざを折った。
 まるでいつもそうしているみたいに。
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