姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
「……ごめんなさい」
私は怯えた体をより小さくした。
睦美は自分の怒りの分、私が反省することが当然だと思っているのか、正座の私を見下ろし睨みつけたままだ。
なんにしても都合が良かった。
「わかってるよね、それ着て成人式に出るなんて許さないからね」
「……でも、もう買ってくれて」
反抗されるのが大嫌いな睦美にぐっと顔を上げた。案の定、睦美はカッとなった。
「いつもくちごたえすんなって言ってるよねえっ」
言葉だけじゃなく足が飛んできた。
今日の睦美はいつも以上に機嫌が悪かった。
「気が変わったってママに言って、返品でもなんでもしたらいいじゃん」
「……」
身を固くしていると睦美は見開いた目を近づけてきた。
「イヤなの? 今度は着物を切り刻まれたいの? ママ、傷つくだろうね、洋服とはわけが違うよ?」
「ごめんなさい……でも“ママ”が」
「『ママ』? そう呼ぶなって言ったことも忘れたっ?」
また足が飛んできた。
「あんた、ママとなに話したの? まさか私の胸の傷痕のこと話してないよね?」
「……え、っと」
私は、蹴られた腕を擦りながらおろおろする。
睦美が私を「あんた」と呼ぶときは、怒りの指数が振り切れる直前だ。いつもならそれを察して私が引く。だけど――
どくどくと、体の中を駆け巡る血液に押される。――もっと睦美を怒らせないと。