姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
仮面を剥がすまで
*
バイトの後で、麗と近くのカフェに入った。
私は周囲の客を気にしながら録画ファイルを麗のスマホに送った。
麗は、暴行を受ける私の映像を見て両手で顔を覆った。
「厚塗りだと思ったら……、むーちゃん、こんなの、やだよ」
「でもメイクって便利なものだよね」
「……」
今なら分かる。睦美の傷痕は油性マジックか母の化粧品で作った偽物のはずだ。
「それとね、ママも睦美の本性に気づいたかもしれないの」
「えっ?」
母は今朝も思いつめた表情で必死に目配せをしてきた。……気付くに決まっている。だってそれは、私がずっと母に送ってきた信号と同じだったから。
「どうにかして、ママとふたりになりたいけど難しいだろうな」
今の睦美は間違いなく警戒している。私と母を近づけないようにこれまで以上に目を光らせるはずだ。
「この動画、ママに見せたいな……」
「だよね、傷痕のことまでばっちり語ってるもんね」
そうなれば私のこれまでの言動の、誤解を解くことができる。
「ねえ、お母さんが気づいたなら、お父さんにも伝わってるって思っていいよね?」
麗の言いたいことも分かる。
母が無理なら父に見せればどうかという提案だ。けれど……
「パパが睦美のしてきたことを知っても、私の味方はしてくれないんじゃないかな」
「まさか、そんなはずないよ」
麗は否定してくれるが、私は弱く首を横に振る。
父は、母と違って自分だけの親ではない。睦美の父でもあるのだ。
「それにママと睦美の母親、両方とつきあってたんだよ。サイテーじゃない?」
母の故郷で過去の話を聞いてから、私は父を嫌いになる努力をしてきた。心の中でも何度もひどい言葉を投げつけた。なのに隙あらば、思い出の中の優しい父が瞼の裏側に現れた。
「子供の頃さ、パパにすごく可愛がってもらったんだよね、それ、なかなか忘れられないね」
「うん。私も覚えてるよ。むーちゃんを溺愛してたもんね」
「遠すぎる過去だけどね――それよりさ」
心配する麗のためにこの話題を終わらせる。じゃないと、私の愚痴はきっと終わらない。
「睦美の本性をみんなに見せたいんだけど、どうしたらいいと思う?」