姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~

決行前夜(碧)


  +  +

「光里ちゃん、合コンのメンバー集めありがとね」
 碧は、打ち合わせのために入ったコーヒーショップで、光里に飲み物を手渡しながら感謝を伝えた。 
「いいのいいの、碧君とカノジョさんのためだもん」
 
 光里にこっそり連絡先を渡されてから、何度か会い本音と事情を聞いた。

 光里の思惑は当初、睦美が狙っている碧(男)を手に入れて睦美に“仕返し”をしたいというものだった。だが話を聞いてみると、睦美に告白した男のことが、今も好きなのだという。
 それならば力を貸すよ、と碧は提案した。
 ――実は、俺のカノジョも傷つけられてね。敵を討ちたいんだ。

 光里には、具体的な復讐方法を教えてはいない。
 ただ、合コン会場で睦美の本性を晒すつもりだ――と打ち明けた。
 
 光里は意外に純粋で単純な女の子だった。
 『そのためにむーちゃんに近づいたなんて、すごい愛だね』と碧の行動に感動して涙ぐんだ。

 
「睦美とはずっと仲がいいの?」
 復讐計画を話す前、碧は光里と睦美の関係性を細部まで探った。
 裏切りに合わないよう、念には念を入れた。

「ううん、大学生になってからだよ」
「ん?」  
 大学付属校のため、人間関係はあまり動かないと聞いたことがあるが?
「私たち外進なのよ、だから高校までのむーちゃんのことはよく知らないんだ」
「そういうことね」

「むーちゃんって、交友関係を広げるのが好きらしいの。広く浅く、いろんな人と仲良くなりたいタイプなんだって。だから見ない顔だった私たちに声掛けてきたみたい」
「睦美は昔の友達を切って、光里ちゃんたちと一緒にいるってこと?」 
「そういうわけでもないみたい。前の友達とも会ったら仲良く喋ってるし誘われたら遊んでるし。なんていうか、むーちゃんは『憧れ』の存在で、独り占めしちゃいけない――みたいな空気になってるらしい」
 ……なんだそれ
 碧は心の中で白けながら、へえ、と相槌を打って先を促す。

「私たちとも結構別行動多くて。アナウンサー志望だから人脈広げたり、いろいろやることあるんだろうね、って言いながら一緒にいる感じ」
 なるほど。
 そういう関係性なら、友人たちが睦美より光里の味方をしたくなる気持ちも分かる。
 いろいろと腑に落ちて、碧はさらに切り込んだ。

「いざとなったら睦美に寝返るような子たちはいそう?」
 光里は強く横に首を振った。
「そもそもむーちゃんは私たちのことを『取り巻き』みたいに思ってる。口には出さないけどそういう空気、こっちに伝わらないはずないじゃない? みんな内心面白く思ってないよ」
 戦略的な演出が成功したのも狭い世界まで、ということか。
 睦美に対して思い入れがない光里たちには、さほど影響力が及ばないようだ。
 追い風だ、と碧はほくそ笑む。

「碧君のカノジョって、どんな子なの?」
 光里とお互いの恋愛について腹を割ると、当然聞かれる。 

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