エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
放課後。
ホームルームが終わって、私はテスト対策のプリントを抱えながら教室を出る。

少しだけ残って復習してから帰ろう。
そう思って廊下を歩き出した、そのとき。

ぐいっと腕を引かれた。

「きゃ……!」

気づいたときには、廊下の端の壁際に引き寄せられていた。
目の前には、見慣れた金髪。

「鳳城くん……!?」

「どこ行くの」

「ど、どこって……空き教室で勉強を」

「ひとりで?」

「う、うん……」

カイルくんは私の顔をのぞきこむ。
逃げ場がないくらい近い距離に、頭が真っ白になる。

壁に手をつかれて、まるで閉じこめられたみたいだ。

「……朝比奈とじゃなくて?」

「ち、違うよ!」

「ならいい」

ほっとしたように小さく息をつくその顔が、思ったよりやさしくて、また胸が苦しくなる。

「鳳城くん、さっきから変だよ……」

「おまえが鈍いだけ」

「ええ……」

「ほんと、そういうとこ」

呆れたみたいに言いながら、カイルくんの指先が私の髪に触れた。
びくっと肩が揺れる。

「な、なに……?」

「花びら」

そう言って見せられた指先には、薄い桜の花びらが一枚。

……そんなの、ずるい。

あんなに意地悪なのに。
こんなふうに、たまにびっくりするくらい優しいから、困る。

「テスト範囲、わかんないとこあるなら」

カイルくんが少しだけ視線をそらしながら言う。

「……俺が見てやる」

「えっ」

「勘違いすんな。ただ、おまえが変なやつに捕まるの面倒なだけ」

「鳳城くん、それ全然言い方優しくない」

「うるさい」

そう言ったくせに、耳が少し赤い。

私は思わず、ふっと笑ってしまった。
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