エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
そのときだった。

「勝手に何吹きこんでんの」

低く鋭い声が、空気を切り裂いた。

私ははっとして振り向く。
廊下の奥に立っていたのは、鳳城くんだった。

金色の瞳が、ひどく冷たく細められている。
その視線を受けた麗華も、さすがに少しだけ表情を固くした。

「カイルさま」

「麗華。帰れ」

「せっかくお話していたところですのに」

「おまえが一方的に話してただけだろ」

鳳城くんはまっすぐこちらへ歩いてくる。
その足音だけで、張りつめた空気がさらに濃くなった。

「ほのか」

名前を呼ばれて、肩がびくっと揺れる。
だけど私は、すぐに目を合わせられなかった。

そんな私を見て、鳳城くんの眉がわずかに寄る。

「行くぞ」

「……え」

「話、ある」

短く言って、私の手首をつかむ。
そのまま歩き出そうとする鳳城くんに、麗華が静かに声をかけた。

「カイルさま。本気ですの?」

足が止まる。

「その方は、あなたの隣に立つにはあまりにも――」

「麗華」

鳳城くんの声が、低く落ちた。

その一言だけで、私は息をのむ。
こんな声、初めて聞いたかもしれない。

「それ以上言うな」

麗華は一瞬だけ唇を引き結んだ。
でもすぐに微笑みを作って、優雅に一礼する。

「失礼いたしましたわ」

そうして去っていく背中を見送る間もなく、私は鳳城くんに引かれるように歩き出していた。
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