エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
「鳳城くんっ」

「おまえさ」

「えっ」

「誰にでもそんなふうにノート見せんの」

思わぬ言葉に、私はぱちぱちと瞬きをした。

「だって、困ってるみたいだったし……」

「警戒心なさすぎ」

「け、警戒って」

「この学園、いい人ばっかじゃないから」

低い声。
からかいじゃない、本気の響きが混ざっていて、胸が少しだけどきっとする。

でも、次の瞬間にはいつもの意地悪な顔に戻っていた。

「まあ、おまえはぼーっとしてるから無理か」

「ひどい……!」

私が頬をふくらませると、朝比奈くんが吹き出した。

「結城さん、鳳城に振り回されてるね」

「ほんとです……」

「否定しないんだ」

カイルくんがそう言いながら、ようやくノートを返してくる。
受け取るとき、指先が少しだけ触れた。
たったそれだけで、変に胸が熱くなる。

「ありがと……」

小さく言うと、カイルくんはなぜか少しだけ目をそらした。

その日の昼休み。
クラスでは、来週のテストの話で持ちきりだった。

私はお弁当を食べたあと、図書室で少し復習しようと席を立つ。
すると教室の後ろのほうから、また声がかかった。

「結城さん、午後も少し教えてもらっていい?」

朝比奈くんだ。

「あ、うん。私でよければ」

そう返した瞬間、窓際の席で寝たふりをしていたカイルくんが、ゆっくり顔を上げた。
金色の髪の隙間からのぞく瞳が、妙に鋭い。

「……また?」

教室の空気がぴたりと止まる。

朝比奈くんが苦笑いする。
「またって、そんな嫌そうな顔すんなよ」

「してない」

「してるって」

私は二人の間でおろおろするしかない。

するとカイルくんは立ち上がって、私の前まで来た。
すぐ近くに立たれると、背の高さのせいで余計に心臓が落ち着かない。

「結城」

「は、はい」

「おまえ、昼は図書室行くんだろ」

「え……う、うん」

「じゃあ先に俺」

「……え?」

予想外の言葉に固まる。
朝比奈くんも目を丸くした。
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