エリート学園の最上級王子は、地味な私を離さない。
「鳳城が教わるの?」

「別に」

「じゃあ何」

「こいつのノート借りる」

借りる。
そう言いながら、カイルくんはもう私のノートに手を伸ばしている。

「ちょっと、鳳城くんっ」

「嫌なら来れば」

「えっ」

「図書室。十分だけ付き合え」

それだけ言うと、カイルくんは私のノートを持ったまま、さっさと教室を出ていってしまった。

「ええっ!?」

あわてて追いかけようとする私に、朝比奈くんが笑いをこらえながら言う。

「……これ、完全に独占されてるやつじゃない?」

「ち、違うと思います……!」

でも、言い切る自信がなかった。

図書室の奥。
人の少ない窓際の席で、カイルくんは私のノートをぱらぱらとめくっていた。

「ほんとにきれいにまとめるんだな」

「返してください……」

「やだ」

「またそれ……」

私が向かいの席に座ると、カイルくんは足を組んだまま私を見る。

「で。朝比奈にどこまで教えたの」

「どこまでって……数式のところだけだよ」

「ふうん」

「……もしかして、怒ってる?」

思いきって聞くと、カイルくんは少しだけ眉をひそめた。

「別に怒ってない」

「でも、なんか機嫌悪い気がして」

「気のせい」

即答。
なのに全然、気のせいに思えない。

私はそっとノートに手を伸ばす。
するとカイルくんも同じタイミングで手を動かして、また指先がぶつかった。

「あ……」

小さな沈黙。
先に視線をそらしたのは、カイルくんのほうだった。

「……おまえさ」

「うん?」

「簡単に他のやつの近く行くなよ」

その言葉に、胸がどくんと鳴る。

「え……」

「無防備すぎ。見てて危なっかしい」

「でも、勉強教えただけで……」

「それでも」

低く落とされた声が、いつもよりずっと真剣だった。

私は何を返していいかわからなくなる。
ただのクラスメイトに向ける言葉じゃない気がして、困ってしまう。
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