目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です
国際プロトコル、欧州社交界の歴史的文脈、各国の政情と宗教・芸術の相関関係、そしてワインやクラシック音楽の歴史に至るまで――。

真由はそれらを単なる「お勉強」ではなく、国際ビジネスにおける「相手の心理を解き明かすための交渉ツール」として構造的に頭へ叩き込んでいった。

​同時に、社内のマナー講師や国際経験豊かなベテラン秘書のもとへ足繁く通い、立ち振る舞い、視線の配り方、呼吸の置き方といった「洗練された身のこなし」を体に染み込ませていく。

​「市川さん、そこまでなさるのですか?  副社長は貴女にそこまで求めていらっしゃらないでしょうに……」

​指導にあたっていたベテラン秘書が感嘆と心配の混ざった声を漏らした。

真由は背筋をピンと伸ばしたまま、まっすぐな瞳で微笑んだ。

​「副社長が求めていらっしゃらないからこそ、やるんです。私が副社長に守られる存在から、副社長の『真の対等なパートナー』になるために」

​
< 117 / 136 >

この作品をシェア

pagetop