想定外につき、対処不能
 そのまま車を走らせていると、俺は一つの問題点に気付いた。

 果たして、このまま俺の自宅に向かっても良いのか?いや、彼女の自宅には「四葉」という犬と「三つ葉」という猫が一緒に暮らしている。迎えに行くことを提案するか否か、苦渋の選択を迫られた。

 すると、不意に彼女がこちらに手の平を見せてきた。俺はそういう時もある、と思いながら、そっと手を重ねた。

 よし、ここでさり気なく聞くか、と前方の赤信号を捉え、ブレーキに足を掛けた時だった。

「ねぇ、木崎」と彼女が呼び掛けてきた。

「何でしょうか」俺は静かにブレーキを踏んで、軽くハンドルを握り直した。

「晩御飯、どうする? 何が食べたい?」そう言って、彼女はこちらを向き、無邪気に笑った。

 とても可愛らしい。いや、そうじゃない。何を相談されているのか、把握しろ、俺。

「そうですね、私は……、貴女の好きな物が良いです」そう応え、俺は再びハンドルを握った。

 しかし、彼女は「つまんない」と呟き、淡々と前を向いた。

 なぜだ。俺は選択肢を間違えるはずがない。そこで俺は自宅の冷蔵庫の中身を思い浮かべた。近頃は帰宅が遅くて、食材の確保も出来ていない。これでは失態どころでは済まなくなる。彼女が安心して料理出来るよう、スーパーに寄って行こう。

「少し寄りたい所があるのですが、宜しいでしょうか」俺は彼女に声を掛けた。

「いいよ。でも、手は繋いでね」彼女はそう言って、その手の力を弱めると、「離したら、誰かに着いて行くかも」と何食わぬ顔で、景色を眺め始めた。

 それはダメだ。絶対に阻止する。俺は重ねた手を軽く握って、車を走らせた。

 彼女の行動パターンは幾つもあって、その度に善処してきた。だが、日曜のスーパーは混雑が避けられない。良く行く場所だから、全体図は頭に入っている。客層を考えても、若い男や独り身は少ないだろう。そう考えて、スーパーの駐車場に向かい、空きスペースに車を停めた。

 俺は直ぐに運転席を抜け出して助手席に向かい、ドアを開けてから周囲を見回した。よし、不審者は居ない。やはり、家族連れが多くて、出入りも頻繁に見受けられる。余り長居は出来ないから、予め購入する食材を決めておくべきだ。

「今日はカレーライスにしましょう」俺はドアを閉めたあとで言った。

 すると、彼女は口角を上げ、「じゃあ行こっか」と言って、俺の左手を掴んだ。

 その手を俺はなぜか、軽く握り返していた。
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