想定外につき、対処不能
彼女は食事の間、あまり話しかけてこない。俺は様子を窺いながら、この後の予定を組み立てた。まず、必要な荷物の運搬を業者に依頼することが先決だ。信頼の置ける業者は幾つか把握しているから、後は日時の確認だ。そう考えたところで、箸を置くと、彼女も同時に箸を置いた。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした。この後はどう致しますか」俺は思わず尋ねた。
だが、彼女はこちらを見もせず、席を立ち、フードを目深に被った。そして伝票を手に、カウンターに向かって行った。
まずい、怒らせたか、と俺は直ぐに席を立って、後を追った。彼女より一歩先に出て、店員にカードを差し出した。
「一括でお願いします。あと、領収書も」
危うく彼女に支払わせるところだった。それだけは絶対に避けなければならない。男として当然の嗜みだ。そう思いながら、カードを仕舞い、ふと彼女のほうに目を向けると、少し不機嫌そうにしていた。パーカーに両手を入れ、口を結んだ状態で、踵を返すと、足を進めて行った。確実に怒っている。良く考えろ、俺。
ここまで予定外の事はあったが、充分に対処は出来ている。
では、なぜ彼女はいつものように突発的な行動を起こさない……?
そこで俺はさらに注意深く、辺りを見渡した。海沿いに人影は無し。万が一走って行っても追いつける体力はある。いや、駐車場までの間に、道化師が風船を手にして立っている。行き交う人に差し出しているが、中身の保証は一切無い。何より、人物像として一番怪しい。
しかし、彼女には子供のような所がある。差し出されれば、躊躇いもなく受け取り、無邪気に笑い掛けてくる。絶対に可愛い。いや、そこじゃない。彼女の純粋さを重視するな。
俺は目を光らせ、彼女が道化師から風船を受け取るのを見守り、その手にある赤い風船を凝視した。よし、中身は何も入っていなさそうだ。後はこれまで通りに車に行って、乗り込むのを見守るだけだ。
駐車場に停めていた車に辿り着き、助手席のドアを開けて、俺は静かに佇んだ。
すると、彼女の左手が微かに触れた。その一瞬の隙に風船が手から離れて、空に飛んでいった。
『あ』と声が重なり、俺は手を伸ばしたが、僅かに届かなかった。
彼女は空を見上げたままだった。俺は、背が高くても役に立たないことを後悔していた。
「すみません、私の注意不足です。もう一つ貰って来ましょう」そう言うほかに無く、彼女を促そうとした。
「もういい。それより、早く木崎のとこに行こ」
敢え無く彼女に止められ、華奢な体が乗り込むのを確認してから、静かにドアを閉めた。
なぜだ。先を急ぐ必要があるのか?と理由を探しながら、俺は運転席に乗り込んだ。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした。この後はどう致しますか」俺は思わず尋ねた。
だが、彼女はこちらを見もせず、席を立ち、フードを目深に被った。そして伝票を手に、カウンターに向かって行った。
まずい、怒らせたか、と俺は直ぐに席を立って、後を追った。彼女より一歩先に出て、店員にカードを差し出した。
「一括でお願いします。あと、領収書も」
危うく彼女に支払わせるところだった。それだけは絶対に避けなければならない。男として当然の嗜みだ。そう思いながら、カードを仕舞い、ふと彼女のほうに目を向けると、少し不機嫌そうにしていた。パーカーに両手を入れ、口を結んだ状態で、踵を返すと、足を進めて行った。確実に怒っている。良く考えろ、俺。
ここまで予定外の事はあったが、充分に対処は出来ている。
では、なぜ彼女はいつものように突発的な行動を起こさない……?
そこで俺はさらに注意深く、辺りを見渡した。海沿いに人影は無し。万が一走って行っても追いつける体力はある。いや、駐車場までの間に、道化師が風船を手にして立っている。行き交う人に差し出しているが、中身の保証は一切無い。何より、人物像として一番怪しい。
しかし、彼女には子供のような所がある。差し出されれば、躊躇いもなく受け取り、無邪気に笑い掛けてくる。絶対に可愛い。いや、そこじゃない。彼女の純粋さを重視するな。
俺は目を光らせ、彼女が道化師から風船を受け取るのを見守り、その手にある赤い風船を凝視した。よし、中身は何も入っていなさそうだ。後はこれまで通りに車に行って、乗り込むのを見守るだけだ。
駐車場に停めていた車に辿り着き、助手席のドアを開けて、俺は静かに佇んだ。
すると、彼女の左手が微かに触れた。その一瞬の隙に風船が手から離れて、空に飛んでいった。
『あ』と声が重なり、俺は手を伸ばしたが、僅かに届かなかった。
彼女は空を見上げたままだった。俺は、背が高くても役に立たないことを後悔していた。
「すみません、私の注意不足です。もう一つ貰って来ましょう」そう言うほかに無く、彼女を促そうとした。
「もういい。それより、早く木崎のとこに行こ」
敢え無く彼女に止められ、華奢な体が乗り込むのを確認してから、静かにドアを閉めた。
なぜだ。先を急ぐ必要があるのか?と理由を探しながら、俺は運転席に乗り込んだ。