想定外につき、対処不能
 俺は寝室で深い溜息を吐き出し、おもむろに腰を上げた。寝室から出ると、浴室の方から短い声が聞こえてきた。なぜだ。ここへ来てから、彼女は次々に行動を起こしてくる。いや、もう悠長な事は言ってられない。素早く行動するべきだ。そう考えて、俺は浴室に向かった。

 すると、彼女はワンピースを濡らしたまま、軽く舌を出し、直ぐに引っ込めてから、こちらを見て言った。

「このシャワー、重くて扱いづらい」

「そこを動かないでください。あと、何もしないように。絶対です」俺は力強く伝え、寝室に向かい、クローゼットを開けた。取り敢えず、シャツ。それから、バスタオル。パンツは履けないから、ハーフパンツでいいか?その前に、下着……。いや、何を考えてる、やめろ。今はそこじゃない。彼女の身体を冷やさないことが先決だ。

「すみません、お待たせしました……」そう言って、視線を上げると、彼女はワンピースの裾を持って絞っていた。

 なぜだ。そんな事をしても意味がない。落ち着け、俺。彼女に何を言っても聞き入れないことは熟知しているはずだ。

 そこで俺は彼女の肩にタオルを優しく掛け、用意してきた物を差し出した。

「早く着替えてください。風邪を引いてはいけないので」

「ありがと。木崎のシャツか……」そう言って彼女は、渡したシャツを広げ、吟味していた。

 やはり、色が暗すぎたか?いや、明るすぎるとダメだ。身体の線が出てしまう。馬鹿か。どこに重きを置いてるんだ。とにかく、部屋の温度を調節をしないと……。そう考えて、着替えた後のことを彼女に伝えた。

「終わったら、隅にでも置いといてください。直ぐに乾燥機に入れますので」

「はーい」

 よし、これで彼女は素直に従ってくれるはずだ。部屋の探検も終えたようだし、後は夕飯までの時間をどう見守るかだ。

 そして、俺はリビングのソファーに腰を下ろし、足を組んで、膝に肘をついて、頬杖をついた。この状態はとても落ち着く。だが、落ち着いてどうする。彼女が来た時の事を考えなくてはならない。

 彼女が俺のシャツを着て、ここに来る。そう思うと、複雑な気持ちになったが、今更どうしようもない。見るな、気にするな、会話を続けろ。俺は三原則を掲げ、組んでいた足を戻し、膝の上で手を軽く組んだ。

「お待たせ」そう言って、彼女は目の前に現れ、俺の手を軽く避けると、膝の上に座った。

 よりによって、なぜそこなんだ……?
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