措定外につき、対処不能
 「あ」と俺は声を上げた。おもむろに体を起こし、眼鏡に指を掛けた。危なくそのまま寝る所だった、と眼鏡を手にして、新たな問題に直面した。

 普段通りであれば、眼鏡のほうが何かと動きやすい。だが、コンタクトのほうが印象が良いんじゃないか?と思い、洗面所に向かった。

 そこで引き出しを開けると、運悪く切らしていた。一生の不覚だと思った。いや、昨日は時間帯が遅くて、ドラッグストアは閉まっていたから、仕方ない。俺の仕事が悪い。

 潔く諦め、洗面所を抜け出すと、玄関に置いた靴が目に入った。肝心なことを忘れていた、とシューズボックスを開けて、一足ずつ玄関に置いた。

 予め用意した服装を頭に浮かべ、色を選別していく。右端の黒はブランド感が強すぎる。その横にある茶色のスウェードは、季節と真逆すぎる。やはりここは無難な生成りのスニーカーが相応しい。

 よし、もう寝よう、と決めて、寝室に向かった。

 目覚ましは掛けたし、予備もある。これで安心して眠れる、と静かに目を閉じた。

 だが、本当に安心していいのか?と一抹の不安を覚え、一通り確認のために、3回ほど見回ってから、漸くベッドに入った。

 静かに目を閉じた。それでも、一つだけ確認できないことが、頭の中で繰り返されていた。

 考えるな。映画に行くだけだ。隣で前を観てるだけでいい。いや、待て。隣でいいのか?

 ダメだ。まだ隙がある。俺は目を閉じたまま、思考を巡らせた。

 明日は日曜で混雑状況は想定内だ。座席の位置を指定するなら、真後ろか、背後の斜め左右しかない。予約しておくべきか……、いや、それは彼女に悪い。

 折角の提案を台無しにするわけにはいかない。彼女は映画を観ること自体を楽しみにしているはずだ。

 何より、彼女は以前から好きなアニメの映画化を心待ちにしていた。

 やはり、ここは隣に座ったほうがいい。周囲を見渡せるし、何が起きても直ぐに対処出来る。

 そうして、俺は息を吐き出して、眠りに就いた。
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