措定外につき、対処不能
「木崎柊介。そこまでだ。大人しく指示に従いなさい」
その声は柔らかで、聞き心地の良いものだった。
俺が直ぐに振り向くと、彼女は俺と同じような眼鏡を掛け、生成りのワンピースに、フード付きのパーカーを肩に掛け、口角を上げていた。とても似合っている。いや、当然だ。
「おはようございます。映画、楽しみですね」
俺はそう言いながら、彼女の芝居に乗るべきだったと後悔した。でも、その後が全く予想出来ない。あれほどシミュレーションを重ねたというのに、この有様だ。集中しろ、俺。
「そうだね。ねぇ、ポップコーン食べたい」彼女は柔らかく微笑んで言った。
「承知しました。直ぐに買ってきます。飲み物はどうしますか」そう言いながら、俺は目先に見える軽食販売所の看板を捉えていた。
「んー……、木崎が選んで」少し悩むと、直ぐに笑い、俺のほうを見つめてきた。
「かしこまりました。直ぐに……」
いや、何だ今の返事は。どう考えても堅すぎる。彼女に怪しまれてる可能性がある。だが、果たしてそうだろうか。いちいち俺の言葉を覚えているはずがない。そう結論を出したところで、注文をし、品物を受け取り、踵を返した。
すると、彼女はチケット売り場で購入をしているようだった。しかし、その近くでは、数人の若い男性が彼女を見ながら耳打ちをしていた。まずい、バレたか、と直ぐに彼女の元に急いで行った。
一人の男が彼女に近づき、口を開いた瞬間に、俺は二人の間に割って入った。
「璃乃、チケット買えた? もう始まりそうだから、行こう」
思わず彼女の手を取った。だが、そこじゃない、と直ぐに離れた。
「すみません……」俺はそう言うほかに無い。だが、彼女は「何が?」と不思議そうな顔をして、俺を見つめた。
やはり、今日の俺はおかしい。数時間の睡眠では足りなかったのか?それは無い。いつもより確保出来ている。あとは男らしく、謝罪をするべきだ。
「咄嗟に名前を口にしてしまい、すみませんでした。今後は仮名にしようと思います」
いや、今のも堅すぎるか……。でも、対処方法はそれ以外に無い。それに、先程の男達も携帯を使用していないようだし、既にこちらを見てもいない。問題は解決した。そう思っていた。
「ねぇ」と彼女が呼びかけてくるので、俺はすぐに彼女のほうを見た。
「そのままでいいよ。違う名前で呼ばれたくない」
その言葉に表情が止まり、頭の中が真っ白になった。でも、直ぐに俺は……。
「承知しました」と口にしていた。
その声は柔らかで、聞き心地の良いものだった。
俺が直ぐに振り向くと、彼女は俺と同じような眼鏡を掛け、生成りのワンピースに、フード付きのパーカーを肩に掛け、口角を上げていた。とても似合っている。いや、当然だ。
「おはようございます。映画、楽しみですね」
俺はそう言いながら、彼女の芝居に乗るべきだったと後悔した。でも、その後が全く予想出来ない。あれほどシミュレーションを重ねたというのに、この有様だ。集中しろ、俺。
「そうだね。ねぇ、ポップコーン食べたい」彼女は柔らかく微笑んで言った。
「承知しました。直ぐに買ってきます。飲み物はどうしますか」そう言いながら、俺は目先に見える軽食販売所の看板を捉えていた。
「んー……、木崎が選んで」少し悩むと、直ぐに笑い、俺のほうを見つめてきた。
「かしこまりました。直ぐに……」
いや、何だ今の返事は。どう考えても堅すぎる。彼女に怪しまれてる可能性がある。だが、果たしてそうだろうか。いちいち俺の言葉を覚えているはずがない。そう結論を出したところで、注文をし、品物を受け取り、踵を返した。
すると、彼女はチケット売り場で購入をしているようだった。しかし、その近くでは、数人の若い男性が彼女を見ながら耳打ちをしていた。まずい、バレたか、と直ぐに彼女の元に急いで行った。
一人の男が彼女に近づき、口を開いた瞬間に、俺は二人の間に割って入った。
「璃乃、チケット買えた? もう始まりそうだから、行こう」
思わず彼女の手を取った。だが、そこじゃない、と直ぐに離れた。
「すみません……」俺はそう言うほかに無い。だが、彼女は「何が?」と不思議そうな顔をして、俺を見つめた。
やはり、今日の俺はおかしい。数時間の睡眠では足りなかったのか?それは無い。いつもより確保出来ている。あとは男らしく、謝罪をするべきだ。
「咄嗟に名前を口にしてしまい、すみませんでした。今後は仮名にしようと思います」
いや、今のも堅すぎるか……。でも、対処方法はそれ以外に無い。それに、先程の男達も携帯を使用していないようだし、既にこちらを見てもいない。問題は解決した。そう思っていた。
「ねぇ」と彼女が呼びかけてくるので、俺はすぐに彼女のほうを見た。
「そのままでいいよ。違う名前で呼ばれたくない」
その言葉に表情が止まり、頭の中が真っ白になった。でも、直ぐに俺は……。
「承知しました」と口にしていた。