措定外につき、対処不能
3時間ほどの映画は、内容は勿論のこと、映像から音楽まで、一気に楽しめた。この後で何を話されても、完璧に対応は出来る。
ただし、一点だけ、対処出来ないことが起きた。
暗いスクリーンの中を、静かにエンドロールの文字が上がっていく。それを見ながら、肘掛に置いていた手に、少し冷たい手が触れてきた。
冷房が効きすぎてるのか、と空調に意識を向けた。その瞬間だった。
柔らかい手が、俺の手の平の下へ、素早く滑り込んできた。そして直ぐに細い指が、こちらの指の間を通り抜け、その手が軽く絡んだ。
何だ、これは……。
思わず俺は周囲に目配せをし、空調の温度も確かめた。目立った動きをする人間はいないし、温度は若干高いが、直ぐに下がりそうだ。何人か席を立って、出て行くのが見える。問題はない。
しかし、いつまでこうして居ればいいんだ……?
いや、どう考えても、エンドロールが終わるまでだ。彼女は映画の余韻に浸っている。それを邪魔するわけにはいかない。気を抜くな、俺。
そうして、徐々に室内に明るい照明が灯り、人々は席を立って、移動し始めた。ここは少し時間を置いてから、席を立ったほうが良い。人が詰まった所で目に付くと厄介だ。
先程も男に見つかっているし、注意深くしなければならない。そう思いながら、漸く疎らになった頃を見計らい、席を立とうとした。
だが、彼女は一切動こうとせず、前を見つめていた。
そこで、俺は上げかけた腰を戻し、静かに口を閉じた。
正直、声を掛けるべきか否か、迷った。でも、早めに出ないと、館内スタッフに怪しまれる。まだ人は居るから大丈夫そうだけど、そろそろ声を掛けようと口を開いた時。
「ねぇ、木崎」
彼女の声が聞こえたと同時に、俺の左手に軽く力が入った。
「何でしょうか」
俺は周囲を目で追いながら応えた。
「このあと、暇?」
彼女は突然何かを言い出すのは、想定内に入っている。
「はい。どこでも同行致します」俺はそう返した。
彼女は「じゃあ……」と言って手を離し、直ぐに腰を上げ、こちらに向くと、「最初に一緒に行ったカフェに連れてって」と言って、その手を差し出した。
「承知しました」
俺は、その手から目を逸らした。腰を上げて、席を立ち、彼女に先を行かせるよう、背後に回り込んだ。
でも、出入口の付近で、館内スタッフが二人の間を割いて通った。
そして、上映所を出る時には、俺の手はしっかりと彼女に握られていた。
どうして、こうなった……。
ただし、一点だけ、対処出来ないことが起きた。
暗いスクリーンの中を、静かにエンドロールの文字が上がっていく。それを見ながら、肘掛に置いていた手に、少し冷たい手が触れてきた。
冷房が効きすぎてるのか、と空調に意識を向けた。その瞬間だった。
柔らかい手が、俺の手の平の下へ、素早く滑り込んできた。そして直ぐに細い指が、こちらの指の間を通り抜け、その手が軽く絡んだ。
何だ、これは……。
思わず俺は周囲に目配せをし、空調の温度も確かめた。目立った動きをする人間はいないし、温度は若干高いが、直ぐに下がりそうだ。何人か席を立って、出て行くのが見える。問題はない。
しかし、いつまでこうして居ればいいんだ……?
いや、どう考えても、エンドロールが終わるまでだ。彼女は映画の余韻に浸っている。それを邪魔するわけにはいかない。気を抜くな、俺。
そうして、徐々に室内に明るい照明が灯り、人々は席を立って、移動し始めた。ここは少し時間を置いてから、席を立ったほうが良い。人が詰まった所で目に付くと厄介だ。
先程も男に見つかっているし、注意深くしなければならない。そう思いながら、漸く疎らになった頃を見計らい、席を立とうとした。
だが、彼女は一切動こうとせず、前を見つめていた。
そこで、俺は上げかけた腰を戻し、静かに口を閉じた。
正直、声を掛けるべきか否か、迷った。でも、早めに出ないと、館内スタッフに怪しまれる。まだ人は居るから大丈夫そうだけど、そろそろ声を掛けようと口を開いた時。
「ねぇ、木崎」
彼女の声が聞こえたと同時に、俺の左手に軽く力が入った。
「何でしょうか」
俺は周囲を目で追いながら応えた。
「このあと、暇?」
彼女は突然何かを言い出すのは、想定内に入っている。
「はい。どこでも同行致します」俺はそう返した。
彼女は「じゃあ……」と言って手を離し、直ぐに腰を上げ、こちらに向くと、「最初に一緒に行ったカフェに連れてって」と言って、その手を差し出した。
「承知しました」
俺は、その手から目を逸らした。腰を上げて、席を立ち、彼女に先を行かせるよう、背後に回り込んだ。
でも、出入口の付近で、館内スタッフが二人の間を割いて通った。
そして、上映所を出る時には、俺の手はしっかりと彼女に握られていた。
どうして、こうなった……。