措定外につき、対処不能
この状況に困惑してる場合ではない。一瞬のミスが命取りになる。手の件は敢えて触れるべきではない。そこは考えるな、俺。
まず、彼女を館内から車まで安全に行かせる。特に車の往来、人の飛び出し、外からの侵入に目を光らせなければならない。
近い場所に車を停めておいて良かった。無事に後部座席に辿り着いた。あとはドアを開いて、周囲を警戒する。前方、左右よし。背後に気配は無い。そう確認した瞬間だった。
彼女は、ふと足を止め、直ぐに回り込んだ。そして、素早く助手席のドアを開けると同時に乗り込んだ。速すぎる……。
いや、今のは彼女の足元に気を取られただけだ。席に居るのだから、問題はない。俺が運転に細心の注意を払えば良いだけだ。エアバッグは付いてるし、車両の整備も完璧だ。エンジンを掛けて、空調の調節も問題無し。あとはラジオのチャンネルを合わせて、音量の調節だ。
だが、その時、運の悪いことに、あいつの曲が流れてきた。ここで止めれば、彼女に怪しまれる。音量を下げるしかない……。
「ねぇ、木崎。少しボリューム上げて」
しかし、敢え無く彼女から声が掛かった。なぜだ。彼女の嗜好はクラシックかジャズのはず。まさか……、いや、この曲も良く聞けば、ジャズに似ている。そこで、俺は僅かに音量を上げ、運転に集中した。
すると、彼女はパーカーのフードを被り、シートに深く体を預けた。少し疲れているようだから、いつも以上に慎重に走ろう。目的地までの地図は頭に入っているし、順調に行けば15分ほどで到着出来る。
街中から大通りを走り、繁華街を通り過ぎると、住宅街が見えてきた。赤信号で停まってる間、ふと彼女のほうに目を向けると、俯いていた。フードには猫耳が付いていて、とても可愛い。いや、そこじゃない。余り見ることは出来ないが、彼女は爪の先を執拗に触っている。
何か悩みごとか?と、俺は運転をしながら、思考を巡らせた。時間は11時半過ぎ、先程の軽食では空腹になるのも無理はない。少し先を急ぐか……とアクセルを踏み込んだ時。
「ねぇ、木崎……」彼女の声は、少し力が抜けていた。
「何でしょうか」俺はハンドルを握る右手に力が入った。
そこで、彼女はこちらに手の平を向けた。
「手、繋いで」
「今は運転中ですので……」そう断る他に無く、俺は前を見ていた。けど……。
「オートマでしょ、これ。早く」
敢え無く急かされ、その手の平の上に、そっと重ねた。
俺は何をしてるんだ……?
まず、彼女を館内から車まで安全に行かせる。特に車の往来、人の飛び出し、外からの侵入に目を光らせなければならない。
近い場所に車を停めておいて良かった。無事に後部座席に辿り着いた。あとはドアを開いて、周囲を警戒する。前方、左右よし。背後に気配は無い。そう確認した瞬間だった。
彼女は、ふと足を止め、直ぐに回り込んだ。そして、素早く助手席のドアを開けると同時に乗り込んだ。速すぎる……。
いや、今のは彼女の足元に気を取られただけだ。席に居るのだから、問題はない。俺が運転に細心の注意を払えば良いだけだ。エアバッグは付いてるし、車両の整備も完璧だ。エンジンを掛けて、空調の調節も問題無し。あとはラジオのチャンネルを合わせて、音量の調節だ。
だが、その時、運の悪いことに、あいつの曲が流れてきた。ここで止めれば、彼女に怪しまれる。音量を下げるしかない……。
「ねぇ、木崎。少しボリューム上げて」
しかし、敢え無く彼女から声が掛かった。なぜだ。彼女の嗜好はクラシックかジャズのはず。まさか……、いや、この曲も良く聞けば、ジャズに似ている。そこで、俺は僅かに音量を上げ、運転に集中した。
すると、彼女はパーカーのフードを被り、シートに深く体を預けた。少し疲れているようだから、いつも以上に慎重に走ろう。目的地までの地図は頭に入っているし、順調に行けば15分ほどで到着出来る。
街中から大通りを走り、繁華街を通り過ぎると、住宅街が見えてきた。赤信号で停まってる間、ふと彼女のほうに目を向けると、俯いていた。フードには猫耳が付いていて、とても可愛い。いや、そこじゃない。余り見ることは出来ないが、彼女は爪の先を執拗に触っている。
何か悩みごとか?と、俺は運転をしながら、思考を巡らせた。時間は11時半過ぎ、先程の軽食では空腹になるのも無理はない。少し先を急ぐか……とアクセルを踏み込んだ時。
「ねぇ、木崎……」彼女の声は、少し力が抜けていた。
「何でしょうか」俺はハンドルを握る右手に力が入った。
そこで、彼女はこちらに手の平を向けた。
「手、繋いで」
「今は運転中ですので……」そう断る他に無く、俺は前を見ていた。けど……。
「オートマでしょ、これ。早く」
敢え無く急かされ、その手の平の上に、そっと重ねた。
俺は何をしてるんだ……?