豪華客船で再会した冷徹海運王と、もう一度恋が始まりました
「少し待っていて」

 そう言い残すと、彼はそばを通ったスタッフに声をかけ、グラスを手に戻ってきた。

「水分を摂ったほうがいい」

 差し出されたのは、水の入ったグラスだった。レモンだろうか。そっと口に含むと、ほんのりと爽やかな香りが鼻から抜けていく。

「ありがとうございます。……お忙しいのに」
「いや、かまわない」

 彼は私の隣に少し距離を置いて立った。
 見下ろされる形になるのが落ち着かなくて、私はうつむきがちにグラスの中身をもうひとくち含む。
 冷たい水が喉を通って身体の奥に染みていった。

「無理はしないほうがいい。せっかく船内を取材できる機会だが、体調を崩しては意味がない」
「はい。気をつけます」

 そのとおりだ。無理をしたら余計に周りに迷惑をかける。
 だけど、座って水を飲んだのがよかったのか、気分はかなりマシになってきた。

「潤一さん」

 不意に割り込んできた声を聞き、私はハッとしてすぐに腰を上げた。
 いつからそこにいたのだろう。上品なオフホワイトのワンピースに、大粒のパールのネックレスをまとった女性が、こちらを真っすぐに見つめている。
 彼女の艶やかな巻き髪と隙のないメイクは、思わず見とれてしまうほどの華やかさだった。
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