豪華客船で再会した冷徹海運王と、もう一度恋が始まりました
「こういう指摘こそ、今回の視察で欲しかったものだ。すぐに担当者へ伝えて改善させる」
「正式な初就航までに間に合うでしょうか……」
「ああ。助かった。ありがとう」

 目力の強い瞳に射貫かれた途端、心臓が跳ねた。それは緊張とは違って、なんだかくすぐったい。
 彼は冷徹な社長としての一面を持ちながらも、思いやりや感謝を大切にしている人だ。
 それは昔から変わらないなと思ってしまった。

 御堂社長の背中を見送ったそのあとは、再び友野さんと一緒に船内をくまなく見て回った。
 エンターテインメントホールの広さや設備、子供向けのキッズルームまで、一つひとつていねいアピールポイントをチェックしていく。
 気づくと手にしていた資料は、書き込んだ文字で埋まっていた。

 夕方近く、船は港へと戻ってきて、私たちは下船口へ向かった。
 
「収穫、多かったわね」

 友野さんはそう言って、満足そうに伸びをしている。

「はい。これをもとに、しっかりと企画が練れますね」

 笑みをたたえてそう答えながらも、私の頭の片隅にはまだ、先ほどの彼の言葉が残っていた。

『こういう指摘こそ、今回の視察で欲しかったものだ』

 過分な褒め言葉だったのかもしれない。それでも、御堂海運グループのトップに立つ彼が、私の意見をきちんと聞いてくれてうれしかった。
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