豪華客船で再会した冷徹海運王と、もう一度恋が始まりました
 名刺を渡しただけなのに、私の実家のことや初瀬造船の業績のことまで調べたのかと思うと、愛華さんに対して一気に恐怖心が湧いた。

「潤一さんに取り入って、なにを企んでるの? まさか実家の稼業への支援を頼むつもりかしら?」

 愛華さんはニヤリとした不気味な笑みを浮かべた。人前で見せていた愛想のよさは、もうどこにもない。

「違います。私はレガリアトラベルの社員としてここにいるだけで、実家は関係ありません」

 なぜかとんでもない誤解を招いているみたいで、私はそれを解くため、愛華さんの正面に立ってしっかりと向き合った。

「あら、そう? でもね」

 愛華さんは私の耳もとに顔を寄せ、低い声でささやいた。

「潤一さんに優しくされたとしても、図にのらないでね。自分は特別扱いされてるなんて勘違いしちゃダメよ。彼の隣には誰がふさわしいか、それくらいはわかるでしょう?」
 
 彼女の放つ言葉の刃が深く胸に突き刺さる。とまどいと悔しさで、喉の奥がカッと熱くなった。

「わ、私は決してそんなつもりは……」

 きちんと否定したいのに、うまく言葉が出てこなくてもどかしい。
 どうして今日会ったばかりの人に、こんなことを言われなければいけないのか。
 くやしさから、私は無意識に両手で拳をつくっていた。
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