嘘つきな3人

ビルの2階まで上がり、伊久間くんは事務所の重い扉をいつものように開けてくれた。

「おはようございまーす」

「おはようございます」

中から返事が重なる。

伊久間探偵事務所は、私を含めて5人しかいない。所長で、伊久間くんの叔父でもある伊久間恵吾(いくまけいご)さん、事務を担当する村瀬巴(むらせともえ)さん、探偵の宮川直人(みやがわなおと)くん。そして、伊久間くんと私。

自分の机へ向かおうとすると、後ろからコンビニのレジ袋を差し出された。

「はい、紅ちゃん」

「ありがとう」

受け取った瞬間、巴さんがこちらを見る。

「また伊久間くんに朝ごはん気にされてたの?」

「……なんで分かるんですか」

「分かるわよ」

くすっと笑われて、私は首を傾げる。隣では伊久間くんが何も言わず、自分の机に鞄を置いていた。

こういうやりとりも珍しくない。

私たちが中学の同級生で、隣に住んでいて、毎朝ほとんど一緒に出勤することを、事務所のみんなは知っている。

それ以上のことは、誰も知らない。

――たぶん。
< 10 / 36 >

この作品をシェア

pagetop