嘘つきな3人
夕方が近づいたころ、事務所の扉を控えめに叩く音がした。
所長が返事をすると、扉がゆっくり開いた。
入ってきたのは、見覚えのない男の人だった。
背が高い。
最初にそう思った。
黒い髪は緩く波打っていて、片側だけ耳にかけている。三白眼気味の目元が、少しだけ近寄りがたく見えた。
「お仕事中にすみません。1階に喫茶店を開くことになったので、ご挨拶に伺いました」
ここ数週間、空いていた1階で工事をしているのは知っていたけれど、何の店になるのかまでは気にしていなかった。
「明日から営業を始めます。長らく工事の音でご迷
惑をおかけして、すみませんでした」
「いやいや。全然気にならなかったよ」
所長と話す横顔を、なんとなく眺める。
知らない人が事務所へ来ること自体は珍しくない。依頼人も来るし、取引先の人が顔を出すこともある。
特別な理由なんてなかった。
ふいに、その人がこちらを向いた。
目が合った。
なぜか私は目を逸らせなかった。