嘘つきな3人
◇
翌日。
昼が近づくころには、1階からコーヒーの香りが上がってくる気がした。本当に匂っているのか、それとも昨日のことを思い出しているだけなのかは分からない。
「美作ちゃん、お昼どうする?」
巴さんに声をかけられて時計を見ると、もう12時を少し過ぎていた。
「どうしようかな……」
「また後回しにする気でしょ」
……みんなして、私のご飯事情を疑いすぎだと思う。
「紅ちゃん、あげる」
午前中は外に出ていた伊久間くんが事務所に戻ってきたと思えば、コンビニのレジ袋が差し出された。袋の中には、私がよく昼に食べるサンドイッチとカフェラテが入っている。
「俺のついで。いらない?」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
巴さんが呆れたように笑うった。
「ほんと伊久間くんは美作さんのことよく分かってるわね」
「長いんで」
伊久間くんは、それだけ言って自分の席へ戻った。
長い。それだけ。
中学生のころから知っていて、今は隣に住んで、同じ事務所で働いている。私が何を食べるのかも、何を飲むのかも、言わなくても大体分かっている。
それを特別だと思ったことはない。ずっと、そうだったから。