嘘つきな3人
仕事を終えるころには、外はすっかり暗くなっていた。パソコンを閉じて机の上を片づけていると、伊久間くんが鞄を肩に掛ける。
「帰る?」
「うん」
それだけで、一緒に帰ることが決まる。どちらかが誘ったわけでもない。帰る時間が重なれば、自然と並んで歩く。いつものことだ。
事務所を出て階段を下り、1階まで来たところでガラス越しに明かりが見えた。
クロッカス。
昼間より店の中がよく見える。暖かい色の照明と、深い色の椅子。カウンターの向こうでは、久我さんが何かを片づけていた。
「見てる」
隣から声がして、すぐに視線を前へ戻す。
「見てない」
「寄ってく?」
「……寄らない」
「そ?」
伊久間くんは、それ以上何も言わなかった。