嘘つきな3人
けれど、食べ進めるうちに、だんだん手が止まってしまう。美味しいのに、最後の少しが入らない。頑張れば食べられそうな気もしたけれど、結局フォークを置いてしまった。
「ごちそうさまでした」
久我さんが皿を下げに来つつ、食後の飲み物を聞きに来た。
所長と巴さんはコーヒー。直人くんはアイスコーヒー。伊久間くんも迷わずコーヒーを選ぶ。
最後に、久我さんが私を見る。
「美作さんは?」
「私も、コーヒーで」
「苦味が強いのと、酸味があるのだったら、どっちが好き?」
そんなことを聞かれたことがなくて、少し考える。
「……苦い方が好きです」
「分かった」
やがて目の前に置かれたカップから、やわらかな湯気が上がる。一口飲むと、香ばしい苦味のあとに、ほんの少し甘さが残った。
「どう?」
少し離れたところから、久我さんがこちらを見ている。
「……おいしいです」
「よかった」
私の好きなものを知っている人はいる。
けれど、こうやって聞かれて、自分で答えて、それに合わせて何かを選んでもらうのは、少し新鮮だった。