嘘つきな3人
◇
気づけば、定時を少し過ぎていた。パソコンを閉じていると、外から戻ってきた伊久間くんが鞄を肩に掛ける。
「帰る?」
「うん。……でも、ちょっとクロッカスに寄ってこうかなって。だから、先帰ってて」
「わかった。帰り道気をつけてね」
伊久間くんはそれ以上聞かなかった。
事務所を出ていく背中を見送ってから、机の端に置いていた100円玉を手に取る。私も鞄を持ち、階段を下りた。
昼とは違って、クロッカスの中には空いた席が増えている。扉を開けると、カウンターの向こうにいた久我さんが顔を上げ、私を認識すると目元が少し緩んだ気がした。