嘘つきな3人
「お釣り、100円多かったです」
手のひらの100円玉を見せると、久我さんが首を傾げた。
「……あれ。本当?」
久我さんはレジへ視線を向ける。100円玉を差し出すと、久我さんは受け取る前に私の顔を見た。
「100円返すためにわざわざ寄ってくれたの?」
「……帳簿が合わなくなると困ると思ったので」
そう答えると、久我さんが黙った。変なことを言っただろうかと思って、少しだけ不安になる。
「……父が、そういうのに細かい人だったので。少し似たのかもしれません」
「……お父さん?」
「……はい」
自分から父を話題に出したものの、それ以上父の話はしたくなくて、口をつぐむ。久我さんは不思議そうな顔をしたけれど、何も言わなかった。ただ、ほんの少しだけ考えるように目を伏せた。そして私の手のひらの100円玉を受け取った。
「わざわざありがとう」
それだけのやりとりなのに、なぜか少しだけ居心地が悪くなって、私は鞄の持ち手を握り直した。
「じゃあ、帰ります」
扉へ向かいかけたところで、後ろから声がする。
「美作さん。また来て」
前にも聞いた、同じ言葉だった。