嘘つきな3人
「おはよ。紅ちゃん」
昨夜、私を抱いていた人とは思えないくらい、いつもの声だった。名前を呼び合う夜は、もう終わっている。
「……おはよう、伊久間くん」
伊久間くんは私の顔を見るなり、少し眉を寄せた。
「ちゃんと朝ごはん食べた?」
「食べたよ」
「ほんとに?」
「ほんと」
じっと見られて、思わず視線を逸らす。こういうとき、この人は妙に鋭い。
……本当は面倒で、朝ごはんは食べていない。
「嘘つきな紅ちゃん。コンビニ寄りましょうね」
楽しそうに笑う伊久間くんを置いて、私は先に歩き出した。すぐ後ろから、当たり前みたいに足音がついてくる。昨夜のことには触れない。それが、私たちの暗黙のルールだ。