嘘つきな3人
コンビニに入ると、伊久間くんは迷うことなくパンの棚へ向かった。
「これでいいよね?」
差し出されたのは、いつも私が選ぶ小さなクロワッサン。
「……なんで勝手に決めるの」
「紅ちゃん、いつもこれじゃん」
「……たまには違うものを食べるかもしれないでしょ」
「じゃあ何食べたい?」
聞かれて棚を見回す。サンドイッチ、おにぎり、惣菜パン。少し考えてから、結局クロワッサンを手に取った。
「ほらね」
伊久間くんが誇らしげに笑った。
店を出るころには、朝の冷たい空気で少しだけ目が覚めていた。事務所までは歩いて10分ほど。私たちは並んで歩く。
約束したことはないのに、こうして一緒に出勤するのも、いつからか当たり前になっていた。