恋は買収できません!~厄介な幼馴染CEOの強引すぎる溺愛~

⑮

運転手さんには先に帰ってもらい、私と原田さんはコンペ会場の近くにある居酒屋にいた。

「じゃあ、水野さん。今日までの頑張りに乾杯!」
「乾杯! お疲れさまでした!」

小ぶりのジョッキをかちんと合わせ、よく冷えたビールを一口。

「あ~、美味しい!」
「はは、いい飲みっぷりだね」
「蒼真にも前、惚れ惚れする飲みっぷりだって言われました」
(って、わざわざあいつの話をしなくていいでしょ)

茹でた枝豆と冷やしトマトと焼き鳥をふたりでつまみながら、蒼真の無茶ぶりにチームで応え続けたこの3か月を振り返っていた。

「はぁ。ほんと原田さんと話してると落ち着きます。優しくて、一緒にいると安心できて」
「そう?」
「はい。まさに理想のリーダーって感じです。原田さんが日々蒼真の愚痴を聞いてくれてなかったら、私、今頃爆発してます」

原田さんは、半分ほど残った2杯目のビールのジョッキを置いた。

「あのさ」

やけに改まって言われ、私も枝豆をつまむ手を止める。

「前に水野さん、神崎のことは恋愛対象じゃないって言ってたよね。それは今も変わってない?」
「え? あ……はい、まあ」
「僕とか、どうかな」

突然の言葉に目を瞠った。

「この3か月、近くで水野さんの頑張りや周りへの気遣いを見てきた。すごく素敵な人だなって思ってたんだ。つまり……好きに、なっちゃったんだ」
(っ……)
「僕は神崎みたいに華もないし、ごく普通の会社員だけど、だからこそ話が合うこともあると思う。僕は、水野さんが自然体でいられる相手になりたい。神崎といる時みたいに怒ってばかりじゃなくて……僕といる時は、穏やかに笑っていてほしい」

誠実な言葉に、胸がとくんと音を立てる。

「で、でも……蒼真が黙ってないと思います」
「神崎の許可は必要ないよ。誰と付き合うかを決めるのは、水野さんなんだから」

原田さんは柔らかな口調のままで、きっぱりと言い切る。その言葉がやけに胸に残った。

「もし神崎が譲らなかったら、その時は僕が説得する。知ってるでしょ、あいつとの交渉は得意なんだ」

原田さんには、穏やかな好意を抱いている。でもこれが恋愛感情なのか、一緒にいて安心できるからなのか、自分でもわからない。

(……でも私、このままずっと蒼真に振り回され続けるの?)

頭の中をぐるぐる考えが巡り、返す言葉が見つからない私を見て、原田さんは眉をハの字に下げた。

「……ごめん。神崎に恋愛感情がないからって、僕を選んでもらえるかは別問題だよね」
「ち、違うんです。えっと……」

どう答えたらいいかわからなくて、おしぼりを指先でいじりながらも顔を上げた。

「少し、時間をください。ちゃんと考えたいので」
「っ……うん。ありがとう」

顔を綻ばせて、再びビールに口をつける彼を見ながら思う。

(原田さん、すごくいい人だよね。こんな人となら幸せになれるのかも)
< 15 / 22 >

この作品をシェア

pagetop