恋は買収できません!~厄介な幼馴染CEOの強引すぎる溺愛~
⑱
ビジネスホテルへチェックインし、ベッドにぼすんと倒れ込む。蒼真にメッセージアプリで連絡すると、すぐに既読がついた。私の居場所を聞き出そうとすることはなく「安心した」とだけ届いた返信から、あいつも多少ダメージを受けているのだとわかった。
(……ちょっと言い過ぎたかな)
改めて考えてみたけれど、やっぱり伝えたことは間違っていないと思った。あいつがどれほど私のことを想っていたって、それが私を苦しめるなら正しいことではないはずだ。
***
――翌朝の土曜日。私はコンビニで買っておいたおにぎりを取り出しながらテレビをつけた。時刻は朝8時を過ぎたところで、10チャンネルに切り替えた。蒼真の代わりにコメンテーター席へ座っていたのは三条さんだった。華やかな装いで微笑む彼女の左手薬指には指輪が光っている。
『私自身、中小企業向けのサービスに携わっていますし、夫もIT企業を経営しているので、人手不足やDXの問題はよく話題に上るんです』
三条さんはそう前置きすると、淀みなく話し始めた。突然決まった代役とは思えない、堂々とした受け答えだった。というか……
(三条さんって、既婚者だったんだ)
何口かおにぎりを齧り、ようやく具に辿りついた頃、司会者が三条さんの結婚生活について話を振った。
『パートナーの方も経営者だと、お互いお忙しいんじゃないですか?』
『そうですね。でも、どれだけ帰りが遅くても一緒に夕食を取ってくれるんです。この番組も録画して、帰ったらふたりで見る約束をしてきました』
幸せそうに旦那さんの話をする彼女は、どう見ても夫にベタ惚れの妻だった。
(……私、完全に勘違いしてたんだな)
でも、三条さんが現れてはっきりわかった。どれほど否定したくても、私は蒼真に惹かれている。
(私は、蒼真の全部を否定したいわけじゃない。守ろうとしてくれたことまで嫌だったわけじゃない。ただ……私の人生を、私に返してほしいんだ)
その時、スマホに着信が入った。蒼真が頭をよぎるけれど、母からだった。
『もしもし、千佳? おはよう。実家に残ってたあんたの荷物、今日着でそっちに送ったからね』
「えっ、送ったって、蒼真のマンションに?」
『当たり前じゃない、一緒に住んでるんだから。大体アパートも引き払ったんでしょ?』
「まあ……蒼真が手続きしたから」
『面倒なことをなんでもやってくれて、ありがたいわねえ。じゃあ、ちゃんと受け取ってね。お昼指定にしてるから』
「う、うん。わかった」
通話を切り、ふと思う。
(お母さんからしたら『面倒事もやってくれてありがたい』のか……まあ、そうとも言えるのかもしれない)
テレビでは天気予報が流れていた。今日は1日晴れだという。
(……帰ろうかな)
荷物だって届いてしまうことだし。
(……ちょっと言い過ぎたかな)
改めて考えてみたけれど、やっぱり伝えたことは間違っていないと思った。あいつがどれほど私のことを想っていたって、それが私を苦しめるなら正しいことではないはずだ。
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――翌朝の土曜日。私はコンビニで買っておいたおにぎりを取り出しながらテレビをつけた。時刻は朝8時を過ぎたところで、10チャンネルに切り替えた。蒼真の代わりにコメンテーター席へ座っていたのは三条さんだった。華やかな装いで微笑む彼女の左手薬指には指輪が光っている。
『私自身、中小企業向けのサービスに携わっていますし、夫もIT企業を経営しているので、人手不足やDXの問題はよく話題に上るんです』
三条さんはそう前置きすると、淀みなく話し始めた。突然決まった代役とは思えない、堂々とした受け答えだった。というか……
(三条さんって、既婚者だったんだ)
何口かおにぎりを齧り、ようやく具に辿りついた頃、司会者が三条さんの結婚生活について話を振った。
『パートナーの方も経営者だと、お互いお忙しいんじゃないですか?』
『そうですね。でも、どれだけ帰りが遅くても一緒に夕食を取ってくれるんです。この番組も録画して、帰ったらふたりで見る約束をしてきました』
幸せそうに旦那さんの話をする彼女は、どう見ても夫にベタ惚れの妻だった。
(……私、完全に勘違いしてたんだな)
でも、三条さんが現れてはっきりわかった。どれほど否定したくても、私は蒼真に惹かれている。
(私は、蒼真の全部を否定したいわけじゃない。守ろうとしてくれたことまで嫌だったわけじゃない。ただ……私の人生を、私に返してほしいんだ)
その時、スマホに着信が入った。蒼真が頭をよぎるけれど、母からだった。
『もしもし、千佳? おはよう。実家に残ってたあんたの荷物、今日着でそっちに送ったからね』
「えっ、送ったって、蒼真のマンションに?」
『当たり前じゃない、一緒に住んでるんだから。大体アパートも引き払ったんでしょ?』
「まあ……蒼真が手続きしたから」
『面倒なことをなんでもやってくれて、ありがたいわねえ。じゃあ、ちゃんと受け取ってね。お昼指定にしてるから』
「う、うん。わかった」
通話を切り、ふと思う。
(お母さんからしたら『面倒事もやってくれてありがたい』のか……まあ、そうとも言えるのかもしれない)
テレビでは天気予報が流れていた。今日は1日晴れだという。
(……帰ろうかな)
荷物だって届いてしまうことだし。