恋は買収できません!~厄介な幼馴染CEOの強引すぎる溺愛~

⑳

翌朝、ふたりでエッグベネディクトを食べていた。蒼真からもらって10年以上になるあのマグカップでスープを飲みながら、ふと思った。

「そういえば、あんたってなんで私のことが好きなの?」

同じようにスープを飲んでいた蒼真は、カップを置いてこちらを向いた。

「よくぞ聞いてくれた。というか、聞くのが遅すぎだぞ。もう少し俺に興味を持て」
「はいはい、ごめんごめん」

蒼真は子どもの頃から優秀で、何をしても周囲の大人から褒められていた。クラスメイトたちも、スクールカースト最上位の蒼真に逆らうことはなかった。
そんな中、幼馴染の私だけは蒼真を特別扱いしなかった。それが蒼真の幼心に火を点けたそうだ。

(というかあの頃の私、担任の先生が好きだったんだよね。勉強ができて先生に褒められてばっかりの蒼真が羨ましくて、素っ気なくしてた記憶が……)

まさか、それが原因で蒼真をこんな風にしてしまうなんて想像もしていなかった。蒼真はマフィンを一口サイズに切り分けながら続ける。

「最初は、思い通りにならない千佳が気になってただけだった。だがお前は、優秀だと周りから持て囃されていた俺に媚びも萎縮もせず、真正面から噛みついてきた」

蒼真は昔を懐かしむように目を細める。

「俺にとって千佳は、周囲がどう評価しているかなんて関係なく俺自身を見てくれる、家族以外では初めての存在だった」

仕事初日の帰り、蒼真が言っていた言葉を思い出した。相手が誰でも遠慮なく意見を言える。俺に反抗してくるのがその証拠だ、と。

「初めは、振り向かせてやりたいだけだった。だが追いかけ続けるうちに、お前みたいな女は他にいないと気付いた」

蒼真は、唇についたオランデーズソースをぺろりと舐め取る。

「それ以来、千佳しか見えなくなった」
「……ぷっ、なにそれ。あんたのツボ、独特すぎでしょ」
「別に笑われたっていい。俺のことで、お前が笑顔になるならな」

蒼真の瞳に今まで気づかなかった温かさが宿っている気がして、胸が甘い音を立てる。
そんな私を好きになったと言うのなら、私が自分で選んだ答えも、今度こそ受け止めてくれるのだろう。
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